2016.10.5号
「調達購買改革を巡る誤解 その4」

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      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2016. 10. 5 ─-

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☆今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その4」
☆2016年下期の「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」の日程のお知らせ

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■ 今週のメッセージ「調達購買改革を巡る誤解 その4」
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その4.「部品集約」=「コスト削減」の誤解

過去三回で調達購買改革を巡る様々な誤解について取上げていますが、今回はその
第四回目で「部品集約」について取上げていきます。

第一回目では「集中購買」と「サプライヤ集約」は違い、「サプライヤ集約」は品目によって
は困難であり「コスト削減」にも必ずしもつながらない、ということを書きました。
その「サプライヤ集約」とともによく取り上げられる購買手法が「部品集約」です。

「部品集約」は要するに購入しているモノを共通化しましょう、標準化しましょう、という活動
になります。しかし、これもいくつかのパターンに整理できますし、パターンによって難易度
が全然変わってきます。
例えば新製品のために新しく何か購入しようとするパターンと既に量産化している製品の
構成品を変更して共通化しましょう、という2つのパターンがあげられます。また、集約には
今まで購入してきたあるものに統合しよう、要するに「同じものを購入しよう」というパターン
と標準品を購入しようという2つのパターンあります。つまり2パターン×2パターンの4パター
ンに層別されるのです。

この4つのパターンでメリットデメリットや推進の難易度は大きく異なります。パターン毎に
検証してみましょう。
パターン1は「新規×共通化」これは比較的やりやすいです。しかし、コストが安くなるかと
いうと疑問視はつきます。共通化ということは同じ部品で複数の機能を果たさなければ
ならないということですから専用品の方が安くなるケースも多いです。一方でカスタマイズ
品など、新規生産のために専用の金型や治具が必要なものはその分初期投資が不要
となるのでコストメリットにつながりやすいでしょう。

パターン2は「新規×標準化」です。その前に標準化ですが、サプライヤが持っている標準
的な部品を買う、というものと自社規格や設計標準がありそこで定義されている標準品を
買う、JISやISO規格品を買う、というパターンがあるでしょう。多くのケースであてはまり
易くメリットが出しやすいのはサプライヤ標準品の採用です。これは物だけでなくサービス
などにも当てはめることができます。
話を戻しますが、「新規×標準化」はそれが可能であればやりやすいでしょう。またコストも
安くなりそうです。これは標準品のコストが量拡大によって安くなるということではなく、どちら
かというと標準品でないモノを買うとかなり割高になるのを標準化することで抑制することが
できる、というのが一般的でしょう。

パターン3は「既量産×共通化」です。これは難易度が高いです。既に製品設計が終わって
いるので再度設計変更や代替品の試験評価などを行わないと実施できないからです。
ですから購買部門だけでなく全社を巻き込んだ活動になってきます。一方でコストメリットも
あまり大きなコスト削減は通常考えられません。ですから現実的には殆ど進まない取組み
と言えるでしょう。

パターン4「既量産×標準化」これも難易度は高いです。しかし単価は安くなる可能性が
高いでしょう。ですから実際にはこの取組みを全社を巻き込み如何に進めていくかが推進
のためのポイントとなります。しかし今まで買っていたものを標準化することで、もし新規
生産のための投資による償却が終わっていなければ償却負担は残るため、切替えの時期
などにも注意する必要があるでしょう。

このように4つのパターン毎に考えてもそもそも集約が難しいものもありますし、やり易くても
メリットが出難いものもあります。こういう観点からも「部品集約」=「コスト削減」とは必ず
しも言えないのです。

ただ4つのパターンではやはり「標準化」の2つのパターンであれば、部品集約がサプライヤ
集約にもつながり一社のある特定の品目の生産量の増加につながりやすいです。または
特定のサプライヤの売上増加につながり収益向上につながることも考えられます。このよう
に「標準化」の方が一般的にサプライヤのコスト削減や収益向上につながりやすくメリット
を享受しやすいと言えるでしょう。

しかし現実的には標準化の推進であっても「既量産」の部品集約の活動はハードルが高く
殆ど行われていません。そのため部品集約のメリットを出すためには如何に「新規」の時に
新しい部品をつくらないで標準品や既存品を採用するか、がポイントになります。また
それを仕組みとして持つことが望まれます。

ある企業では製品開発部門に製品別のプロダクトマネジャーを設置するとともに部品毎の
責任者を設置しました。この部品毎の開発責任者は部品集約や共通化の役割を担っており
開発が新規でその部品を開発する際には必ず部品毎の開発責任者の承認を得ること、
という仕組みを作りました。それによって従来であれば製品毎に勝手に開発が行われていた
ものを管理し、部品種類の大幅な削減を実現しています。いわゆる「部品主査」制度です。

一方で難しいのは部品集約などの推進はトータルコストの視点を持たなければならないと
いう点になります。例えばある特定の部品は関係する部品の設計によってスペースが制限
されてしまいどうしても製品毎に限られたスペース内で開発するために種類が増えてしまっ
たというようなケースです。この場合には部品集約をするためには特定の部品はもしくは
関係する部品のどちらかを変更しなければならなくなります。特定の部品Aを標準化する
ために関係するBという部品の種類を増やさなければならない、ということです。このような
ケースではA部品とB部品のトータルコストでどちらの部品を標準化すればメリットが出るか
考えなければなりません。

このような新規設計の際の部品種類を集約する取組みやトータルコストで検討を進める等
の取組みを進めることで始めて「部品集約」=「コスト削減」につながるのです。
前回の繰り返しになりますが調達購買改革のキーワードの元、何から何まで一つの考え方
で推進しようとすると無理が生じるのでしょう。

次回は、誤解その5「競争化」=「コスト削減」の誤解について述べていきます。


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info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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