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「目指せ!購買改革!!」
〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2014.2.5 ─
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☆今週のメッセージ「モノが安いことの道理」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲
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■ 今週のメッセージ「モノが安いことの道理」
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相見積を2-3社のサプライヤから取得した時に、あまりにも見積金額が違うことが
ありませんか?10%前後の違いであればともかく3割違う、場合によっては半額近い
ということはごくごく普通に起こり得ることです。
この場合皆さんはどうしているでしょうか?
単純に安いサプライヤに決めますか?多くのバイヤーは違うでしょう。
何故こんなに差が出てしまったのか調べることでしょう。結果的に2-3社のサプライヤ
が見積っている内容や仕様が全く異なっていた、なんていうことも良くあります。
またそうではなく内容や仕様自体も間違っていないのにも係わらずこういう事態が
起きることもまれにあります。私もこのような状況を経験したことがありますが、通常
こういうケースはサプライヤがバイヤー企業に対してふっかけていることが多いです。
つまりある企業は膨張した見積りを提出しある企業はそれなりの見積りを提出している
ようなケースです。
内容や仕様の前提が異なれば見積価格に差が出てくるのは当り前です。
本来は見積内容や仕様の前提が明確であればそういう差はでてきませんが、
例えばコンサルティングやシステム構築などの仕様が確定できない買いモノも
ありますし、全ての要件を固めて伝達することには無理があります。
ここで言いたいことは、「モノが安い(もしくは高い)」ことには何らかの理由が必ず
あるということです。例えば海外調達品が安いのは人件費が安いことが大きな理由
です。鉄や化学品などの素材なども場合によっては人件費が安い国が原産国で
あれば安価になるかもしれませんが、主要なコストは組立て費や処理費用などの
人が作業を行う部分になります。つまり原価構造を明らかにすることで、ある程度
「モノが安いことの道理」を見極めることができます。
「それでは何故人件費が安いのか。」
経済学的には一物一価の法則と言って完全な自由市場ではモノの価格は一定だと
言われています。にも係わらず例えば中国やASEAN諸国の人件費は今でも日本の
3分の1と言われています。何故なのでしょうか。
これはある方から伺った話なのですが、生活コストの安さが人件費の安さにつな
がっているという話を伺ったときには、なるほど、と感心してしまいました。
例えばタイという国、ここは農耕可能は国土が広く、気候も温暖なため主食である
米が非常に安価だそうです。また衣食住で考えても温暖であれば衣のコストも低く
すみますし、住も同様です。食は米だけでなく米を飼料とする肉類に関しても同様
です。このように生活コストが安いから人件費を安く抑えることができるのです。
ちょっと話が逸れましたが、いずれにしても「モノが安いことの道理」は必ずあるの
です。その道理がないままに引き出した安価は実はとても危険です。
安かろう、悪かろうにつながったり、将来的な値上げにつながるだけでなく、
サプライヤの信用リスクにつながる可能性もあります。
実際に(ここでは具体的な事例は上げませんが)ある時期に競って大手企業の
大口取引をとるために価格競争が激化し、一時期大幅なコスト削減につながった
ものの数年経ってサプライヤの負担が高く、価格見直しを図る方向にあるような
買い物は様々存在します。「道理がない」安価は長続きしないのです。
バイヤーは買うことを商売としている人達です。「人より安く買う」ことも必要ですが、
何故安いか、つまり「モノが安いことの道理」を見極められる能力を持つことも求め
られます。だから重要な仕事なのです。
「安けりゃいいじゃん」ではなく「何故安いのか」が重要ですし、それが見極められる
能力を持つことが本当の安価購買につながっていくからなのです。
当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。
(野町 直弘)
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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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皆様の一層のお申込をお待ちしております。
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□■………………………………………………………………………………■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/
どうぞ楽しんでください。
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第7シリーズ「エンジニアとバイヤーの境界を超えて」
第18回ちょっと言いすぎたみたいだな。
2週間後のことだった。人事発令に購買部の田中の名前があった。
「2009年10月7日 人事発令 購買部 田中孝 霜月製作所出向」
「えっ,本当かよ」。思わず鈴木は声を上げてしまった。
田中はまだ40代だったはずである。霜月電機でも若いうちからの出向は珍しい
話ではないのだが,若手の出向先は大体の場合,海外子会社か戦略子会社だ。
ところが霜月製作所は100%子会社の組立外注工場で,社員も100名程度の
小さな会社。異動の時期でもないのに出向するのは,相当珍しいケースといえる。
「ちょっと購買部行ってきます」。鈴木は隣のアシスタントの女性にそう言って,
購買部の田中のところに急いだ。
田中は机の整理をしていた。フロアに置いたダンボールに,数冊のファイルが
入っていた。
「田中さん,出向するんですって?」鈴木が声をかけた。
「おっ,鈴木さんか,そうみたいだね。今日発令が出ていたよ。鈴木さんにも
いろいろお世話になったな。ありがとよ。」
「いつ行っちゃうんですか?田中さん」
「引き継ぎがまだだから,だいたい2週間後だな」。
「出向して何やるんですか? やっぱり購買部長ですか?」
「そうだね。俺は購買しかできないし。ただ,製作所の購買はほとんどうちが
集中購買しているから,自社では購買権限あまり持っていないんだよな。
年間数千万円くらいだよ。購買部長といっても部下一人,アシスタント一人だしな」。
声をひそめて「要するに飛ばされたってことよ」。田中は笑いながらそう答えた。
鈴木は思った。そう言えばこの人の笑顔ってほとんど見たことなかったな。
しかし何でこんなに明るいんだろう。
「田中さん,また何でこんなことに?」
「うん,ちょっと言いすぎたみたいだな。…あまり大きな声では話せないから
下に行こう」。
田中と鈴木は喫茶ルームに向かった。
以前,田中から「設計の役割って何なのか教えてくれ。」と言われた場所だ。
本当のWin-Winとは?
「コーヒーでいいか?」田中が鈴木に尋ねる。
「いや,自分で払いますよ」。
「遠慮すんじゃねぇよ。給料そんなにもらってないくせに」。
カウンターでホットコーヒーを買い,二人は窓際の席に腰をかけた。
鈴木がこう聞いた。
「田中さん,飛ばされるわりには明るいですね」。
「えっ,明るいわけねえじゃねえか。給料もそのうち下がるしな」。
霜月電機グループでは,数年間の出向期間を超えると,移籍になるルールが
ある。そのときの給与制度は,子会社のものになる。もともと,賃金を抑えて
コストを安くするために会社を別にしているのであるから,田中の給与も
移籍時には下がることは明らかだ。
「でもな,暗くなってもしょうがないしな,新しいところで新しいやり方を作って
いくのもいいかなって思ってるんだよな。だからだよ。本当の購買部を作り
たいんだ。できるかどうかわからないけどな。自分一人じゃなくて組織として」。
「…」鈴木は思わず黙ってしまった。
「プルルルル」田中のPHSが鳴り始めた。
「またか」田中はそうつぶやきながら電話に出た。「はい,田中です。
…すみませんが,その件でしたらお断りしたはずですが。…大変いい条件で
評価いただいているのは嬉しいのですけど…。…実は今日,人事発令も
出ましたので,たいへん申しわけありませんが,またの機会ということで…。
はい,はい,すみません。ありがとうございました。はい,失礼いたします」。
田中は鈴木に顔を向けこう言った。「紹介会社だってよ。登録もしてない
のに,どこからか聞きつけて突然電話してきやがった。結構しつこいんだよね」。
「えっ,自分で登録したんじゃないんですか?」
「するわけねえだろ。やり方だって分からないしな」。
「じゃあなんで分かったんですかね?」
「サプライヤーさんの社長さんからの紹介だよ,多分。うちに来てくれって」。
「ちなみに,どのへんですか?」
「…そんなことよりさぁ,さっきの話だけどな」。田中が話をはぐらかしながら
続けた。「ちょうど2週間くらい前かな,部長とひどくやりあっちゃって。
まあ,言いすぎたかなと思ってあとで謝りには行ったけど,結構購買部員の
中でも聞いていた人間が多くてな,購買部長もこのまま席に置いとくわけ
にはいかない,っていうことだな」。
「それ,知ってます。私も部屋の外にいたの,分かりませんでしたか?」
「そうか。全然知らなかったよ。頭に血が上ってたからな」。
「何をあんなに怒っていたんですか?」
「もう,いいよ」。
「いや,あれだけ怒ったからには,それなりの理由があるんでしょう?」
「…中国のサプライヤーに発注している部品を,すぐに転注するように検討
しろって言われてな。年間2000万円程度の発注だけどな」。
「何でですか,何かトラブルがあったんですか?」
「トラブル? 大ありだよ。トラブル続き,最初はロクなものが作れないトラブル
から始まって,それから設備が壊れたってトラブルもあったし,コンテナ1個分
のロットで良品が3個しかなかったときもあった。量産化した後はコストでモメる。
値上げしないと生産しないって言われて,現地まですっ飛んでいった。
現地工場に行って,こっちがどういう付き合いをこれから考えているか向うの
お偉いさんに説明したら,いたく感動してくれてな。ようやっといい関係が
作れそうだなって,いう感じになったのが3年前のことだ」。
「そんな昔の話なんですか?」
「そう,昔の話だな。トラブル続きで,どうにかしてくれ,何でこんな苦労して
中国から買わなきゃならないんだって感じだよな。その時は,とにかく
低コストだから,トラブルを何とか解決して採用しろ…っていう話だった
んだけどな。今は本当に昔の話がウソのように品質も落ち着いてきた。
発注金額も去年から伸び始めた」。
「それって,転注しろって話とどうつながるんですか? どこに転注しろ
っていうんですか?」鈴木が疑問を感じて田中に尋ねた。
「正確に言うと転注ではなくて内製化。去年の秋口になんとかショックって
あっただろ。その後,経済環境がこんな状況になっちゃってな。うちの工場の
稼働率なんて最低だぜ。こういう状況でとにかく,社内の仕事を増やして
雇用を守れ,だとさ」。
「そんな,無茶な話ですね」。
「まあ経営者としてはしょうがないんだよな,多分。でもな,苦労して作って
きたサプライヤーとの付き合いどうするんだよ。朝礼暮改じゃないけど,
石にかじりついても中国調達を増やせ,て言ってたのは誰だ。それが,
高くても何でもいいから転注しろだとよ。…鈴木さん,うちの調達方針に
どう書いてあるか知ってるか?」
「いや,見たことないですけど」。
「Webに載ってるから一度見てみなよ,美辞麗句のオンパレードだよ。
サプライヤーとのWin-Winを大切にしましょう,とかな。
本当のWin-Winってどういうことなのか分かっていないんだよ。
俺は前にも言ったように,サプライヤーとの中長期の関係性をよく
していくことが仕事だと思っている。甘えだけでなく,緊張感と競争環境を
持たせること,それがバイヤーの仕事だと思っている。だから中国サプライヤー
とも,どういう位置付けで今後つきあっていくか,真剣に考えていた。向うの
トップにその話をしたら,『そんなことを言ってくれたバイヤーはあなたが
初めてです』って感動してくれたよ。中国サプライヤーは在庫調整弁
じゃないんだよ。どう言えばいいんだよ,俺は」。
「…,田中さんが怒るのも無理ないですよ」。
「いや,いいんだよ。もう決まったことだから。それに俺は,こんな購買だった
ら自分で作った方がいいと思っているから。新しい購買部門をな。」
「…」
鈴木は何も言えなかった。
(次回へ続く)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/
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