2013.10.1号
「企業合併とサプライチェーンマネジメント」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買改革最前線〜
─────────────────────────── 2013.10.01  ─

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☆今週のメッセージ「企業合併とサプライチェーンマネジメント」
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
☆コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー再掲

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■ 今週のメッセージ「企業合併とサプライチェーンマネジメント」
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9月にグローバル企業の大型合併・買収案件の発表が立て続けにありました。
一件はマイクロソフトによるノキア帯電話とタブレット(多機能携帯端末)事業
の買収と、もう一件は半導体製造装置の世界1位と3位のアプライドマテリアルズと
東京エレクトロンの経営統合です。
特に後者は過去に例のないような日本企業と米国企業の経営統合であり、グローバル
化が急務となっている日本企業にとっての一つの事業革新手段として取上げられる
ようになるでしょう。また両社の経営統合はその先進事例として今後の成功・失敗が
注目され続けると考えられます。

調達・購買という側面で見ても今回の東京エレクトロンとアプライドマテリアルズの統合
は興味深い事例と言えます。それは単に市場内の他社との競争という視点だけ
ではなく、顧客とのパワーバランスをつけていく、という視点からの統合だからです。

今回の統合にあたって両社の顧客である半導体メーカーの寡占化という要素は非常に
大きな要因であり、両社の合併のトリガーになったようです。
。新聞記事によりますと、半導体メーカーの2002年時点での上位3社の合計シェアは
24%だったものが、2012年のトップ3であるインテル、サムスン、米クアルコムの合計
シェアは30%に達しているそうです。
それに対して半導体製造装置の両社のシェアを単純合計すると25%になるそうです。
このように巨大化した顧客との力関係を保持し価格競争に持ち込まれないようにする、
また技術的な観点からも単なる装置メーカーではなく、半導体製造工程全体をカバー
できるような力をつけていく、ということが目的の一つとのことです。
このように事業や市場全体を垂直的な視点で見ることで単に業界内で競争優位を持つ
だけでなく、エンドユーザーに亘る商品やサービス全体の中でどのように力を持っていく
か、ということが今後の事業戦略には欠かせないものになっているのです。
エンドユーザーへの販売会社、通信キャリア、OS、アプリ、ポータル、端末メーカー、
半導体メーカー、電子部品メーカー、EMS(受託生産会社)、半導体製造装置メーカー、
半導体原料メーカー等。
例えばスマホやPCのビジネスでもそこに存在するプレイヤーはこれだけの様々な業種が
上げられます。この垂直的なサプライチェーンの中で業種として、もしくは企業として力を
持つことが事業発展や高収益に欠かせないのです。

このような時代には垂直的なサプライチェーンの中でソースの切り分けを最適化すると
いう考え方が必要になります。つまりどの機能やパーツ、サービスを内製化し(持ち)、
どの機能やパーツ、サービスを調達する(持たない)か、ということです。
また機能を持つ持たないという観点だけでなく、調達先との関係性を見直すことも必要
です。例えばこの機能を自社に持つことで垂直的なサプライチェーンの中で力が増大
するということであれば、できれば中にその機能を持ちたい訳ですが、そこまで
行かなくてもその重要な機能を持つサプライヤとの関係性を強めていくという戦略
にもつながるのです。
共通した業界内のガリバーと戦うために(今回のような同業種内のガリバー企業が手を
結ぶだけでなく)異業種で手を組むということも今後は出てくると考えられます。

このように高度に複雑化した製品・サービスが溢れる現代には、自社のサプライチェーン
全体における力を如何に強力化していくか、という視点が企業戦略・事業戦略には
益々欠かせなくなっているのです。
1990年代の中ごろから2000年代にかけて特に日本の製造業においてもSCM
(サプライチェーンマネジメント)というコンセプトの元、改革が進みました。
しかし、この活動はあくまでも生産・製造・調達の世界の最適化の活動であり、
多くの企業ではリードタイム削減や在庫最適化が目的でした。そのためコスト競争力
強化や製品力強化にはつながったものの、多くの企業が同様の改革を進めた後は
グローバルでの企業競争力のアドバンテージにはつながっていないのが実態です。
今後のサプライチェーンマネジメントは自社が含まれるサプライチェーン全体
(人によってはバリューチェーンと呼んでいます)を俯瞰し、その中でどのように
力を持っていくのか、その為に必要な機能は何で不要な機能は何か、を見極め、
その方向に舵取りをしていくことに他ならないのです。
こう考えると米アップルやGoogleの戦略も頷けます。一時期のマイクロソフト、インテルも
同様です。マイクロソフトのハード事業やノキアの事業買収をした理由も理解できますし、
アマゾンのキンドルの販売の意味もです。

今後日本企業でも事業・企業買収や統合などで、このような本来のサプライチェーン
マネジメントを実現し短期間で国際的な競争力を強化させるような企業が多くでてくること
に期待したいと考えます。

当メルマガでご意見、ご質問、ご要望などございましたら
info-ag@agile-associates.comまでご連絡ください。
遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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■ コラム「設計魂と購買魂」−垣根を破るエンジニアの物語ー
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日経BP社のTech-onサイトに掲載されているコラムですが
改めて皆さんにここでご紹介させていただきます。
2009年に私が執筆しました開発部門と購買部門を巡る話ですが、
今再読しても古さを感じさせません。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162766/

どうぞ楽しんでください。
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第9回「ゲストエンジニア制度という名の技術流出!」(その2)

「またおまえか!」

 鈴木が昼食から戻ると,机の上に電話メモが数枚置いてあった。昼食中に携帯の電源を
切っていたからだろう。購買の田中と黒須化工からだった。田中の伝言メモを見ると
「部品番号52A70は造れない」と書いてあった。

 鈴木はさっきの設変に何か問題があったのかと思い,あわてて田中に電話をかけた。
「またおまえか!」
 鈴木が名乗る前に田中が言う。
「お前から送られてきたデジカメの緊急設変で黒須から連絡があったんだけど,成形でき
ないぞ。お前もちょっとは成長したかと思ったけど,まだ一人前の図面描けないのか?」
「な,何がまずかったんですか?」鈴木が聞き返す。
「お前,現物を見たことあるのか? 設変で切り落とした所にゲートがあるんだよ。
これだと樹脂の流れも変わるから金型新作だぞ。緊急手配しても最低1カ月はかかる。
黒須の設計に事前に確認したのか?」
「…」
 鈴木は言葉が出なかった。

「取りあえずは量産試作用だろ。しょうがないから追加工で対応するぞ。仕上げ含めて
100円は高くなるけどな」。
 鈴木は心の中で「やってしまった」と思った。
「田中さん,すみません。実は黒須のゲストエンジニアが夏休みで,確認とれなかったんです」。
「またゲストか。英語で言えば格好いいけど,自分がやらなきゃらないことやらせている
だけじゃないかよ。それも金も払わねえで」。

 ゲストエンジニアに設計委託している費用を払っていない,というのは鈴木にとって
初耳だった。設計派遣には,当然のことながら月間自分の給与以上を支払っている
という話は聞いていたが。
「すみません。でもお金払ってないんですか?」
田中が言う。
「バカ野郎! 金の問題じゃないんだよ。お前の設計能力の問題だ。造れない図面
なんか子供の下手な絵より始末悪い。『商品担当』とかお高く止まっていつまでもゲストに
頼っているから設計できないんだ」。
「…」
鈴木は言葉が返せなかった。しかし,先輩の佐藤や他の先輩,同僚の顔を思い出し
「この人たちの中で図面描ける人が何人いるかな,とも思った。

「田中さん,ゲストエンジニアの話とか設計のやり方とか,私にはよく分からないん
ですけど,今度教えてもらえませんか」。
「そ,そんなことよりこの部品どうするんだ,バカ野郎! 金型新作でいいのか? 
追加で500万円はするぞ。干渉相手の方の部品は変えらんないのか? 
取りあえず量産試作は追加工で対応するけどいいんだな」。
「えっ,ちょっと待ってください。もう一度検討します。500万もかかったら,また企画から
メチャクチャ怒られます」。
「今日の9時まで待ってやる。黒須の安部からも電話入ってただろ。この件だから連絡
しなくていい。」

田中が続ける。
「…ところでお前昼飯何時間食ってるんだ? 携帯の電源切ってるんじゃねぇよ」。

 鈴木は電話を切った後,先輩の佐藤に話し,他社からのゲストエンジニアにも相談に
乗ってもらいながら,相手部品の形状変更で量産対応することにした。
9時までにその検討結果を田中に伝え,その後徹夜で設変の手続きを行った。

「金払ってやれよ!」

 数日後,鈴木は設計センター長と購買部の田中が言い合っている光景に出合った。
「金払ってやれよ! 手伝ってもらってるんだろ」。

「田中さん,こっちも予算カットで厳しいんだよ。基本的に発注先に設計を手伝って
もらっているんだから部品コストの中でどうにかしてくれないか。カスタムICとか基板
だったらともかく,樹脂部品で承認図はできない方針なんだよ。
前から対応してくれているじゃないか?」設計センター長が言う。
「その方針自体が問題なんじゃないかと言ってるんだ。そもそも無理な方針なんだから
成り立つわけないよ。部品メーカーも発注が来るんなら何も文句言わないけど,
昔と違って今じゃあ部品メーカーが描いた図面を海外メーカーに持っていって
造らせる量が10倍だぞ。それで文句言うなっていう方がおかしいだろ」。
田中さんは誰に対しても同じ口調だな,と鈴木は思った。

 田中が続ける。
「じゃあ海外生産分はスクラッチで図面起こしてくれ,もしくはアクアプラスチック
に設計させろよ。海外メーカーで部品図書いてくれる所なんてあると思ってるのか?
頼んだら一か月後に,設計派遣に払ってる費用の10倍は請求されるぞ。
それでもいいのか?」
「田中さん,そう言わずに何とか頼むよ。それが購買の仕事だろ」。
「そんなの購買の仕事じゃねえよ。らちあかねえ」。
田中はそう言い放ったまま,センター長の席を立ってフロアから出ようとした。

鈴木は,田中の背中に声をかけた。
「田中さん,ちょっといいですか」
「何だ,またお前か」

(次回へ続く)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081212/162768/

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