2012.12.18号
「政府調達に欠けているモノ」

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 ☆今週のメッセージ「政府調達に欠けているモノ」
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■ 今週のメッセージ「政府調達に欠けているモノ」

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2012年の7月位から日経コンピューター誌上で
「政府システム調達、失敗の本質」という連載記事がありました。
最近ITproというWebサイトでも読むめるようになりました
(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20121204/441881/)
ので内容を簡単に紹介します。

2004年に各省庁の業務プロセスとITの改革を目指した
「業務・システム最適化計画」の策定から8年が経ちましたが多くの
システムが未だに刷新されていません。特許庁のシステムはプロジェクト
そのものが中止し55億円が無駄に、人事・給与システムはプロジェクトが
難航し開発費が当初の2倍の61億円に膨張、などなど驚くべき額の無駄使いが
並べられています。
記者はこれらの政府システム調達の構造的な問題は
「IT人材の質・量が不足している」点と「入札準備から稼働に至るまでの
調達プロセスが未成熟」の2つを取り上げています。
特に2つ目の「調達プロセス」の課題については「システム開発計画を審査する
仕組みやプロジェクトのレビュー機能がない」「技術力で劣るITベンダーの
落札を防ぐ仕組みが機能しなかった」ことを上げています。後者ついては
「価格だけでなく技術も評価する総合評価方式を導入したことは
間違っていなかったが、技術点で差が付きにくく結局は安値での入札が
決め手になった」とのことです。一方で、最適化計画では競争入札および
分割発注の仕組みを取り入れた筈だが、実際には「随意契約」と
「競争入札への応札が1社のみだった」案件が全体の8割に上っており、
見えざる「ベンダーロックイン」に縛られているも述べています。

私は政府調達に欠けているモノで一番重要な視点は「サプライヤマネジメント」
の概念だと考えます。

そもそも上記に上げられている「IT人材の問題」「調達プロセスの未成熟」の
問題は政府だけでなくほぼ全ての民間企業にも同じことが言えます。
しかし、民間企業でこのような多額の投資をしておきながらシステムが
稼働しない、ということは(全くないとは言いませんが)これほど多くありません。
何故、この違いがでてくるのでしょうか。
多くの民間企業は(全くしていないとは言いませんが)このような難易度が
高いシステム開発案件については入札やコンペをしていないのです。
生産システムはここ、会計システムはここ、設計関連システムはここ、という
ように領域毎に得意分野を持つシステム会社を開発・運用会社として指名
していることが少なくありません。何故ならその方が失敗リスクが低いからです。
私は入札やコンペをするな、と言っている訳ではありません。それほど難しい
システム開発であれば、それを遂行できるプロジェクトマネジャーや
そういう方が在籍する企業は多くないでしょう。
つまり「元々比較できないものを無理やり比較しようとするから、問題が
起こりうるべくして起きてしまう」と言っているのです。

これは何もシステム開発に限った訳ではありません。コンサルティング業務
などの業務委託でも全く同じです。もっと言えば車を作り出したころの
トヨタ自動車の取引も全く同じです。トヨタ自動車は(その当時)積極的に
トヨタに売り込みをかけたい部品メーカーがいなかったのです。ですから
自分達で部品メーカーを育てざるを得なかったのです。政府のシステム調達も
そうです。もしこのような失敗リスクが高い仕事ならそもそも実行可能な
プロジェクトマネジャーやサプライヤは絞られます。だったら彼らを育成し、
彼らと一緒にノウハウを築く関係性をつくるべきです。そして一度仕事を
やってもらったら二度と離してはならない。。
これがサプライヤマネジメントなのです。

政府などの公共調達は基本的に「みんなが仕事を取ろうとする、またその
仕事を遂行できる」という前提の仕組みになっています。
だから「広く調達先を求める競争公開入札が◎」という考え方です。
でもちょっと考えてみてください。この記事にあるようなシステム開発会社の
多くは入札時はやる気があったものの、プロジェクト開始後様々な要件変更や
計画変更、あげくの果ては分割発注が原則と言われ、当初予算に対して大幅な
コストアップとなったとしても回収できず、多くのプログラマーは
ノイローゼになり、、、美味しいことなんて何もありませんし、その上
「税金の無駄使い」と批判されるわけです。
これでは政府の仕事を積極的にやりたいと考えるシステム開発会社が
少なくなるのも当たり前です。そうすると結果的に「ベンダーロックイン」に
なってしまうのです。(実際になっているし。)
繰り返しますが私は入札やコンペを否定しているのではありません。
しかし「比較できないものを無理やり比較しようとするから」いけないのです。
「比較できないもの」は「比較できないもの」なりの調達の仕方があります。
例えば
「工数や単金の精査を高め作業内容や作業の効率性をチェックする」
「実現成果に応じた報酬を支払う」
「長期契約の生産性向上の目標提示をしてそれを実現させる」などです。
それで契約価格が高くなってしまうというならそれはそれで仕方がない
じゃないですか。開発中止になって皆が損するよりも高いお金払う方がましです。

以前にも述べましたが政府調達が傾倒しようとしている公開競争入札や
オークションは誰でもできます。何故なら簡単だからです。しかしそれを
適用できないようなモノまで全て適用しようという考え方は危険です。
競争入札もオークションも効果的に活用できる最低限の条件は「少なくとも
2社以上の競争環境ができている」、つまりその仕事をやりたいと考えている
会社が2社以上あり力が拮抗している、というのが条件になります。
世の中にはそうでない買い物もいくらでもあるのです。


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遅くなるかもしれませんが、必ず私(野町)からご連絡させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

(野町 直弘)

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