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「目指せ!購買改革!!」
〜調達購買マネジメント最前線〜
─────────────────────────── 2012.06.05 ─
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☆今週のメッセージVol.1「政府調達改革の視点」に思う
☆「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
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■ 今週のメッセージVol.1「政府調達改革の視点」に思う
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6月1日付けの日経新聞の経済教室に興味深い記事が掲載されていました。
明治大学教授の田中秀明氏の「政府調達改革の視点」という論文です。
田中教授はここで政府調達の問題点を5点あげています。
1.各省庁が何をどれだけいくらで購入しているかが分からない
2.予定価格の上限拘束性
3.時代遅れの会計制度に基づく契約形態や購買手法の制約
4.専門的な人材の不足
5.政府全体の司令塔の欠如
これに対して提言としては
効率化の目標策定(要するにコスト削減目標を設定しなさい)ということと
各省の次官に、効率的な予算執行が行われているかどうかの責任を
付与しなさい(コスト最適化されているかちゃんとチェックさせなさい)
ということをあげています。
また中期的には会計法令の抜本的な見直しによる弾力的な契約手法、
購買手法の選択や複数年による支出管理の重要性を説いています。
田中教授は元々旧大蔵省出身の方であり、
実態を踏まえた素晴らしい論文だと考えます。
ここであげている問題点については、日本と英米を比較し、
英米ではこういうやり方をしている、という事例を踏まえています。
一方で民間と比較して考えるとどうでしょうか?
実は政府調達も民間企業での調達も概ね上げれている問題点は
共通するものであると気づかれるでしょう。
私は政府調達の専門家ではありません。ただ今までの顧客支援等の中で、
田中教授がおっしゃっていることに加え政府調達には3つの問題点が
追加されると考えます。
一つは「仕様の最適化」です。民間でも同様の問題がありますが、
政府調達の場合は、より厳格に「仕様」を決めるのは要求元(ユーザー)
である、と定義されています。また一度決めた「仕様」を変更することは
難しいのが実態です。これが事務用品などの汎用品であればよいでしょう。
しかし、今の時代、購入するモノの多くを占めるのは所謂無形の
サービスであったり、単なる物品だけではなく、物品と様々なサービスを
バンドリングしたようなモノなのです。
そうすると前回のメルマガでも取り上げました通り、どのような仕様で
どのようなサービスの組合せで、どこから購入するのが有利なのか、
様々なケースが考えられます。つまり購入する段階で購入するモノを
特定できない、ということが起こりえるのです。
民間であれば、RFI(情報提供依頼)、RFP(提案依頼)、
RFQ(見積依頼)のプロセスを踏みながら最適な仕様選定を同時に
進めていったり、所謂開発購買の活動のようにサプライヤや
購買・製造部門が仕様決定に対して様々な提案を上げながら、
安いモノが購入できるような手法をとっています。
しかし、公共調達の場合はそれが難しいという違いがあります。
二つ目の問題は「調達計画の把握」です。
この点も多くの民間企業で課題になっています。
田中教授は論文の中で
“各省庁が何をどれだけいくらで購入しているか分からない”
と述べていますが、実はこれはあくまでも結果でしかありません。
調達をする上で重要なのは「何をいくらでどれ位購入したか?」よりも
「何をいくらでどれくらい、いつ購入するか?」が重要になります。
調達計画は各省庁横串で年間の計画が把握できれば当然のことながら
「まとめて契約しよう」ということにつながります。それによって
ボリュームメリットを追求するのが集中購買なのです。
「調達計画の把握」を省庁横串で行う専門組織を作り、
そこに人材を配置すれば自然と専門的な人材は育っていきます。
つまりこれらの問題は「調達計画の把握」ができないこと、
やるための仕組みができていないこと、が根源的な問題と言えます。
最後の問題は田中教授も改革案として触れていますが、
現状の法令や仕組と共に「意識」の問題です。
「各省会計課長の仕事は単純化すれば、予算獲得と法令順守だ。」と
あるように、政府調達で留意すべき点は獲得した予算をつつがなく
消化すること、また誰からも指摘されないようにいかに問題なく
公平な選定を行ったか保障すること、というコンプライアンス面です。
つまりモノを買うということは予算を使うという「権利」と捉えられて
いるのです。「調達」は実は難しい業務です。なぜなら「調達」しなければ
生産活動や事業活動は止まってしまうからです。昨年の東日本大震災や
タイ洪水がもたらした調達難は企業の調達力が企業経営や収益に大きな
インパクトを与えることを改めて浮き彫りにしました。
つまり調達は「権利」ではなく「義務」なのです。
「義務」であれば良いモノをより安く長期安定的に調達することは極めて
あたり前な話です。
こう考えると必ずしも案件の都度公開入札を行うことが最適な調達なのか?
疑問を持つことは尤もなことなのです。
これらの3つの問題をクリアするために田中教授は短期的には各省の次官に
効率的な買いモノができているかの責任を付与せよ、と述べています。
民間では昔の購買課長がその役割を担っていました。
若手のバイヤーがこの価格でこのサプライヤに発注したいと決裁案を出すと
厳しく文句をつける、「何でこの値段なんだ?加工費が何でこんなに
高いんだ?現場見たのか?」から始まり、交渉して価格が下がれば
「何でこんなに安いんだ?こんな値段でサプライヤを泣かせていないか?」
と言われる。こういう経験を昔の民間バイヤーは誰もが一度は経験しています。
調達に係る効率的かつ効果的で最適な決定にかかる責任を持った役割を担う、
うるさ型の人間、正に「目利き」の能力が高い人、
こういう人が今求められているのではないでしょうか?
最近は民間でも、このような若手に嫌がられる職人的なマネージャーが
いなくなってきました。
そういう意味では政府調達においても民間においてもこういう
「目利き」役の存在の重要性を認識する必要性があると考えます。
(野町 直弘)
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