2011.8.8号
「泣けるコストダウン」

アジルアソシエイツでは、メールマガジン「目指せ!購買改革!!」を発行中
(毎週/無料)です。ぜひお申込下さい。
メールマガジンの新規購読申込のページへ
----------------------------------------------------------------------------------------------------
このメールは、アジル アソシエイツのお客様、
アジルアソシエイツが講演するセミナーにお越し頂いた方々、
その他の機会に名刺交換をさせて頂いた方々にお送りしています。

──────────────────────────────────
アジルアソシエイツの坂口孝則が送る 
〜調達購買マネジメントの深層と真相と心操〜
─────────────────────────── 2011.08.08─

* 当メルマガでは、調達・購買・資材に関わるみなさんが、愉しんでいただける
辛口コラムを発信します。ご感想・リクエスト、あるいは購読の解除は末尾にて。
よろしくお願いします。

┏┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◆┃ INDEX
┗┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
 ☆今週のコラム 『泣けるコストダウン』
 ☆8月、9月開催「調達・購買人材向トレーニングセミナー」のお知らせ

□■………………………………………………………………………………………
■ ☆今週のコラム 『泣けるコストダウン』
□■………………………………………………………………………………………

10年ほど前の季節の――つまり2001年に起こったすべての物語の――なかで、
ある一人の若いバイヤーの物語ほど、のちまで私に大きな影響を与えたものは
ない。「IT不況」と称されるその年は、世の中にあふれていた商品が突然
売れなくなり、かつて「時代の寵児」と称された若き成功者たちが没落を
始めていた。製造業の各社は、なんとかコストを抑えねばならない、削減せねば
ならないと焦っていた。しかも、その焦りのやっかいなところは、その不況の
大きさから、何をやってよいのかわからなかったことだ。各企業のなかの
調達部門も、その無策ぶりでは一緒だった。
しかし、なんとしても各社の協力をとりつけ、抜本的なコスト低減を
図らねばならなかった。それも、早急に。ただ、どうしてよいのか、
その絶望の前に立ちすくんでいた。
これは、ある電機メーカーでの話である。
調達部長に、ある課長が提案した。「うちの課に、犀川詠二(仮名)という
若手がいます。若いけれど、やる気はあるし、他部門と本当に仲がいいし、
いつも予想以上の成果をあげてくれます。ためしに、彼に原価改善の
プロジェクトを指揮させてみませんか」
犀川は呼び出され、調達部長から簡単な指示を受けた。
「緊急コスト改善プロジェクトとして、今年20%の削減を達成してほしい」
その犀川という、わずか入社6年目のバイヤーが、翌日から誰も考えつかなかった
手段を取り始めた――すべてのサプライヤーの経営者と営業担当者に直筆の
手紙を送り、コスト抑制のために「御社と一丸になって取り組みたい」と伝え、
一社一社面談に歩き、少なからぬ経営者がその若者の熱意に落涙した。
彼は現場で汗を流し、社内部門と調整を繰り返し週に何度も終電を逃し、
疲れた体をなげうって朝早くから自社の工程作業者とも会話を重ね、
同じ調達部門の人間にも涙目で訴えることで全体をまとめ、2002年には
本当に20%の削減を実現させてしまった――という詳細を語ることは、
今回の主題ではない。
私の感動を呼ぶのは、次の点である。部長が犀川にプロジェクト立ち上げの
指示をした際に、犀川は「どうやって、そのコスト削減を推進すれば
いいんですか?」と訊き返さなかった。なんと向こう見ずで果敢で、それでいて
勇気あるバイヤーだろうか。
バイヤーにとって必要なのは、机上の調達知識や先端のツールではなく、
ましてや小手先の交渉テクニックでもなく、横文字の知識でもない。凛々しく
目の前の仕事にぶつかることである。そして先輩ができることは、勇気を教えて
あげることである。そうすれば、若いバイヤーたちは自発的に問題を解決
しようとし、信頼を勝ち得るために果断を下し、気持ちと人生を集中させ、
そして自分の極限をためすために、無謀なプロジェクトであっても飛び込める
人物になっていくだろう。今は2001年ではない。
しかし、2001年のごとき状況は、今だって、そして将来だって、いつでも
起きるのだ。バイヤーとしていくつかの仕事を指揮したことがある人であれば、
そして物事を少しでも改善させようと苦闘してきた人であれば、きっと分かって
もらえるだろう。
社内外の多くや、同僚のバイヤーたちは、意欲がなく、自分の力で新たな
地平線を拓くという意思を持ち合わせていないのだ。適当な仕事に、真剣では
ない交渉。仕事そのものへの無関心、そして努力も学習もしようとしない。
そして、こういうものが普通になってしまっている。
そういう人たちを給料で釣るか、脅してやらせるか、奇跡が彼らを消し去って
有能なバイヤーたちに置き換わるか。そんなことがない限り、プロジェクトを
成功させることは難しいだろう。
テストをしてみよう。たとえば、これを読んでいるあなたの周りに五人の同僚か
部下がいるかもしれない。そこで、あなたはその一人に、こう言ってみてほしい。
「ウチでコスト低減を推進するために、まずは他社がどんな手法をとっているか
調べてくれないか」
その「彼」は、すぐに「了解です」と調べ始めてくれるだろうか。
きっと「彼」は、めんどうくさそうな、そして生きる熱意を喪失したような目で、
こう聞いてくるだろう。
「他社って、たとえばどこですか?」
「そういうのって、どうやって調べればいいんでしょうか?」
「そんなことやっている時間はないんですが」
「田中君にやらせたらどうですか?」
「明日でいいですか?」
「ニュースサイトをお伝えしますから、ご自分でやってくれませんか?」
「ぼくは、そんなことをするために、ここにいるんですか?」
そして「彼」は、その質問のあとで、不満そうな顔で頷き、しばらくすると違う
誰かに――事務職の女性とかに――その仕事を丸投げし、その5時間後に
「探すことができませんでした」と言うだろう。もしかしたら、あなたが想像する
以上の資料が出てくるかもしれない。でも、多くの場合は、そうではないだろう。
残念ながら。
あなたは、きっと大人の表情で「そうか。わかったよ、ありがとう」と言うだけ
だろう。このように、自分から動こうとせず、創造性を自ら捨ててしまい、
倫理を持ち合わせず、やる気がなく、相手が気持ち良くなるように仕事を
引き受けることができない人たちがいるから、調達・購買部門の地位は低いまま
なのではないだろうか。自分のためにですら努力しようとしない人物が、
まわりのため、会社のために行動を起こそうとするだろうか。
最近は、雇用状態が不安定になっているから、多くのバイヤーが職場に不満を
抱えたままとどまっている。バイヤーの中途採用を募集しても、その多くは
日本語すらちゃんと使えず、礼儀もしっかりしておらず、しかもそれらが
なぜ大切かを考えてもいない、と私の知り合いの経営者はいう。
このような人たちを信じて、全権を託して、「緊急コスト改善プロジェクト」の
立ち上げを命じることなどできるだろうか。
「あのバイヤーのことなんですけどね」とある企業の調達部門の課長職の男性が
教えてくれた。
「あいつねえ、仕事はちゃんとすることはするんだけれど、出張に行かせたら
ダメだね。絶対にサプライヤーさんと飲みに行っては、遅くまで女性の店に
居座るんだよ」
こんな男性に、部門の運命を任せることができるだろうか。私は最近、
「不況で、虐げられている従業員たち」に対する、同情をよく耳にする。私は
その同情に与しないわけではないが、すべての従業員たちが高潔ではないのと
同じように、すべての経営者たちが貪欲でもない、というくらいの認識は
持っている。経営者たちが、ロクな働きをしない社員たちに、少しでも良い
仕事をさせようと走り回っても、社員たちがその熱意を理解せず、すべてが
徒労に終わった例も知っている。そして彼らは髪の毛を白くする代わりに、
ちょっとのお金と住むところ以外は何も残らない。
今はみなが必死である。ほぼすべての企業や部門のなかで、ちょっとしたムダを
駆除しようと苦悶している。そして、もしかすると報われない努力が重ねられ
続けている。そんな中にあっては、経営者たちは「ちゃんとした働きをしてくれる
はずだった」バイヤーたちを解雇し、代わりの優秀な人物を雇う、ということが
起きても何ら不思議ではない。
会社経営とは、もちろん社員の幸福向上のためにあるものでもあるが、まずは
最大限の利益を捻出するために集中される。それは、「緊急コスト改善プロ
ジェクト」を、自信をもって引き受けてくれる勇気ある人物を探し続ける、という
ことでもある。
人は自分自身を悲劇のヒーローにしがちだ。バイヤーたちと話すと、そこには
いつも悲哀が満ち溢れている。
「課長がイヤな奴で!」「誰もおれの本当の実力が分からないんだ!」。
そのようなバイヤーは、まず何よりも「自分が他人に与えるところから始め
なければいけない」という真実を知らない。だから他者から何かを受け取る
こともできないだろう。もし彼らに「緊急コスト改善プロジェクト」をお願い
したら、きっとこう言うだろう。
「忙しいので、他の人にお願いしてもらえませんか?」
私は、このように意欲がないバイヤーを、簡単に更生させることができない、
と経験から知っている。それに、むしろこのような人たちは憐みの対象かも
しれない。しかし、である。彼らを憐れむ暇があるのであれば、別の人たちに
対してそっと涙を拭いたい。崇高な目的のために就業時間やお金など関係なく
ただひたすら努力しているバイヤーたち、そして今日も勝てない調達に挑んで
いる偉大な「どあほうたち」に、である。
私は言い過ぎだろうか。そうかもしれない。
ただ、私の関心の対象はいつも、無謀な仕事に熱意をもって取り組むバイヤー
だった。「緊急コスト改善プロジェクト」を命じられればそれを黙って快諾する。
無視しようとせず、やる前からあきらめもせず、自分の不遇を恨んでみることもない。
そんな人であれば、もし会社がなくなっても、どこでも働いて生きていける。
社会の進化とは、そのような高貴な生のあり方を探し続ける、終わりなき
旅のことである。
2001年に私が不意に聞いた物語。彼はその後、社内のすべての話題をさらった。
彼はどこの調達部門でも、いや、どこの会社でも、どんなプロジェクトでも、
どんな人間からも必要とされるのだろう。誰もが、彼を呼んでいる。彼のような
人間は、多くのところで、本当にいたるところで、本気で、真剣に、必要なのだ。

□■……………………………………………………………………………………
■ 「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」のお知らせ
■□……………………………………………………………………………………

2011年8月,9月の「調達・購買人材向けトレーニングセミナー」の
開催についてご連絡させていただきます。

基礎セミナー】
 「調達・購買業務基礎」セミナー
  2011年 9月13日(火)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

 「間接材購買基礎」セミナー
  2011年 9月16日(金)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

【現場学セミナー】
 「調達・購買人材向け交渉力」セミナー
  2011年 8月30日(火)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

 「実践 海外調達」セミナー
  2011年 9月 6日(火)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

 「サプライヤ工場の見方、改善のやり方」セミナー
  2011年 9月 7日(水) <福岡開催>
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html
  2011年 9月14日(水)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

「コスト削減手法と戦略ソーシング」セミナー
  2011年 9月 9日(金)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

「実践 サプライヤ評価とサプライヤマネジメント」セミナー
  2011年 9月21日(水)
    お申込・詳細はこちら
    http://www.agile-associates.com/training.html

皆様のお申込をお待ちしております。

企業の個別研修をお引き受けします。
ご依頼、ご質問等々は、次のメールアドレスまで!
info-ag@agile-associates.com

□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
■ご感想・リクエストなどはこちらまで
mailto:info-ag@agile-associates.com

■メルマガ購読・バックナンバーはこちら
→ http://www.agile-associates.com/mail_magazine/

■購読解除はこちら
→https://s.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=agile&c=1&n=5258

株式会社アジルアソシエイツ
URL:http://www.agile-associates.com/