第56回 男女関係で調達力を磨く

「売って欲しいと言っていた時は相手にしてもらえなかったが、サプライヤの方から買って欲しいと言われるようになり、交渉をしなくても勝手にサプライヤが値段を下げてくれるようになった」

なんとなくつけていたテレビからこんな言葉が聞こえ、手が止まった。
とあるチェーン店の社長のコメントだった。

何故、購買状況がこんなに変化したのか?

社長のコメントは続いた。
ターゲット先と商品、提供価格は明確に決まっていた。
が、原価から積み上げると出来上がった商品がとてもお粗末なものになってしまい、提供価格で得られる価値があるとはとても思えなかった。
いくらサプライヤに仕入れ交渉をしても、全く相手にされない。
そこで、採算度外視でイメージした商品を当初の設定価格で販売開始した。

社長の決断がそこにあったのだと思うが、これが功を奏し、提供価格から得られる商品のクオリティの高さでお客様は着実に増え、いつしかサプライヤの方から新規取引の依頼があり、彼ら自身で競争して価格を下げて行った、というのだ。

ここから色々な学びがあるが、私はここに人間関係の、しかも男女関係との共通項を見た。

取引をしたい相手(お付き合いしたい相手)に対してアプローチする際、自分を分かってもらうよう努力するが、ダメな場合は、諦めるもしくは一旦引くが再度機会を伺う・・・など、人それぞれ対応をとるだろう。
追い続けても拝み倒しても、あまり進展がない場合が多いだろう。
高いレベルを求めるのであれば、自らも高いレベルになければ、進展する可能性は低い。
自ら高いレベルにあれば、高いレベルの相手に認められ、契約(結婚?交際?)に至る可能性は高くなる。
契約の後は・・・マンネリ化しないように、時には相手を気にかけ思いやったり、環境を変えてみたり・・・。

日々の交渉に力を入れるのも良いが、何が足りないのか?どうすれば魅力と感じてくれるのか?継続的に良い関係が築けるのか?に注力し解決することで、日々の調達活動に使っている労力を減らすことができる。
このような活動も一つの効果的な調達活動だと感じた。



2010年5月

柚木