2009.9.7号
「調達コンサルタントのつぶやき/納得感」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2009.09.07 ───

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  ☆今週のメッセージVol.1「調達コンサルタントのつぶやき」
  ☆今週のメッセージVol.2「納得感」

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■ ☆今週のメッセージVol.1「調達コンサルタントのつぶやき」
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最近、毎週のように研修、セミナーでの講演が続いています。
なるべくわかりやすく出席者の方に理解をしてもらえるように
聞いている方の立場にたって話をしているつもりなのですし、
同じテーマの研修であってもその時点その時点で
最新の情報や新しい手法などを盛り込むことを心がけています。
とはいうもののアジルの社員からもよく指摘されるのですが、
横文字が多かったり、聞き取りにくかったり、
同じ土俵で語っていなかったり、と反省する点も多々あります。

正直私自身、元来話が上手い方ではないと思っています。
考えてみたら何故私が話をする立場なのか、というと要するに
「調達コンサルタント」という仕事についているからなのでしょう。
私は「会社経営者」でもありますが、
その前に「コンサルタント」として人格?が形成されているようで、
それは自ら認識せざるを得ない部分でもあります。

今回は「調達コンサルタント」としてメルマガを書きたいと思います。

私は「コンサルタント」として欠かせない資質は3つあると思っています。
知識や経験、ノウハウ、手法などではなくここで資質と表現したのは、
個人の「信条」であり「信念」であり、
多くの場合、知識や経験などのハードなスキルは「資質」があれば
後から身につけることが可能だとも思っています。

これは以下の3つの力です。
1.やりぬく力
2.あるべき姿の構想力
3.木も見て森も見る力

『やりぬく力』とはどんな仕事でも同じとは思いますが、
こだわりを持って顧客のためにやり遂げる力です。
その力の源になるのは
「この会社のために・・」「この人にために・・」という気持ちです。
そういう気持ちが強くないとつらくて時間の拘束も長い
「コンサルタント」の仕事は務まりません。
「なぜこんな辛い思いをしてまで仕事をしているのか?」
「同じお金を稼ぐのであれば楽して働きたい」という思いの人には
「やりぬく力」はありません。
「この会社のため、この人のため」決めたこと、やった方がいいこと、を
お節介のようにやっていく、誰かからやってくれ、と言われた訳でもないのに。。
これが『やりぬく力』です。

二点目の『あるべき姿の構想力』ですが、
これもコンサルタントとして重要不可欠な資質だと思います。
しかしこの力は資質だけではなく、経験や勘も必要になってきます。
以前BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)という
米国の業務改革手法が日本に広まった時に
「Tobe(あるべき姿)」アプローチという手法が主流になりました。
この当時はベストプラクティスといって
様々な企業の先進的な業務の進め方を取り入れて
「あるべき姿」を実現しようという手法が中心でしたが、
私はこういうコンサルタントを「Tobeコンサルタント」と言って
「Tobeコンサルには絶対になるな!」と社員にも言っています。
企業は様々です。
文化、業務の進め方、人(数、質)、体制、経営、、様々な企業に対して、
実現不可能なTobe(あるべき姿)を求めても全く意味はありません。
これはコンサルタントとして共通する話だとは思いますが、
特に調達・購買業務では企業間でレベルの差が大きいこともあり、
特に調達コンサルタントにあてはまることなのだと思います。
つまり私がここで言っている『あるべき姿の構想力』とは
その顧客企業にとって目指すべき『あるべき姿』を考える力なのです。
目指すべき『あるべき姿』とは実現可能な『あるべき姿』であり、
その状態を現状の経営資源を鑑みながら考える力が『構想力』なのです。
実はこの点は顧客側もあまり理解できていないことも多くあります。
これは数年前のTobeアプローチの弊害とも言えるでしょう。
最後の『木を見て森も見る力』これも重要ですが、
なかなか一朝一夕には身に付かない資質です。
現場に入り込めば入り込むほど「森(全体像)」を見失ないがちです。
コンサルタントはそもそも第三者として現場に入るのですから、
「森(全体像)」が見えていなければなりません。
一方でやはり現場におちている処々の課題(木)に対しても
常にセンサーを働かせていなければなりません。

私はこの3つがコンサルタントとしての欠かせない資質だと思っていますが、
その中でも一番大切なのは『やりぬく力』だと常日頃実感しています。
『やりぬく力』は特に我々のようなブランド力もない
小さなコンサルティング会社にとっては競争力そのものです。
正直な話今まで私自身や会社で経験した全てのプロジェクトが
成功裡に終了したわけではありません。
上手くいかずに経営に穴をあけそうになった
プロジェクトも当然のことながらありました。
しかし少なくともこれだけの期間会社がもってきたのは
『やりぬく力』があったからだと思っています。
常に顧客や顧客のプロジェクトリーダー、メンバーのことを考え、
いかに彼らのお役にたてることをやっていけるか、
その力があれば、自然と実現すべき
『(顧客にとっての)あるべき姿の構想力』も身に付きます。
というか、より良いあるべき姿を目指すことにつながるわけです。
『木を見て森を見る力』は基本的には
日々そのプロジェクトの森のことを考えることから身に付きます。
私も以前諸先輩方から
「とにかく考えろ、考えるのはただだから」と言われました。
考えてみたら朝起きてから夜寝るまで
ずっとプロジェクトのことを考えていることもありました。
そうすることで常に森を見る力が自然と養われていくのです。
そう考えるとやはり『やりぬく力』がベースとなるのです。

『やりぬく力』は能力ではなく資質そのものです。思いです。
この思いの強さが能力の欠如を補うだけでなく、
実現不可能なことを実現することにつながるのです。
成功する事業家の共通する点を
以前知り合いの敏腕ベンチャーキャピタリストに聞いたことがあります。
そのVC曰く「成功するという思い込み」という答えでした。
ある意味当たり前かもしれません。
「実現するまでやり続ける」わけですから。

今回は自省の念も込めて「コンサルタント」として
「調達コンサルタント」の資質について私の考え方を書かせていただきました。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「納得感」
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1.「納得感」という基準

私はコンサルティングの案件を進める上で、
多くの資料や報告書を作る機会、人に説明する機会がありますが、
時に意図して、あるいは無意識のうちに、
「納得感」という言葉を自分にも他のメンバーにも使います。

例えば、自分で資料を作る際、メンバーが作った資料をチェックする際、
その説明を聞く際、「それでは納得感がない」「これなら納得感がある」
ということを言いますし、感じています。
確かに言っていることは正しい、伝えたいことはわかる、
でもいまひとつ納得感が乏しい、といったことがよくあります。

そもそも自分がいまひとつ納得できていない資料を
クライアントに説明しても、相手に納得してもらえるか疑問です。
自分が納得してこそ、相手に自信を持って説明できるわけであり、
相手にも納得してもらえる可能性が高くなると思います。

そのためにはどうすれば良いか。
「なぜか」「どうしてそういえるのか」「根拠となる数値や事実は何か」
「考えられる選択肢は全て洗い出しているか」
「それらをちゃんと検証したか」「論理に飛躍がないか」
「当初の目的と合っているか」「理想と現実との間のバランスが取れているか」
などを自分でつっこみ、考え直すようにしています。

これはなかなか容易なことではありません。
深く掘り下げるほど、対象範囲が広がるほど、規模が大きくなるほど、
新たなつっこみどころ、つまり納得できないところが出てくるからです。

2.プロジェクトの段階

これをプロジェクトの進め方の視点で考えてみると、
相手の「納得」を得るまでに、実際には主に次のような段階を経ると思います。

(1)(話を)聞いてもらう、(資料を)見てもらう、読んでもらう
(2)理解してもらう
(3)合意してもらう
(4)納得してもらう

(1)(話を)聞いてもらう、(資料を)見てもらう、読んでもらう
プロジェクトでは、関係部門の担当者、責任者、また経営陣など、
多くの方にヒアリングをします。
もちろん主目的は「こちらから聞く」ことですが、
逆に、なぜこの案件を進めるのか、目的は何か、この質問の背景は何か、といった
「こちらからも伝えたいこと」は多くあります。
まずはこちらの話に耳を傾けてもらう、資料に目を通してもらう、
そのためにはどうしたらよいかを考えます。

(2)理解してもらう
次に、単に耳を傾けてもらうだけでなく、
ちゃんと理解してもらうために、どうしたら良いかを考えます。
今後の方向性や改善策を示しても、「わからない」「わかりにくい」といった反応、
あるいは「間違って理解される」、ということを避けるために、
短時間でも理解してもらえるわかりやすい説明、資料の作成を心がけます。

(3)合意してもらう
そして、仮に理解は得られても、そのことに合意してもらわなければ、
伝えただけで終わってしまいます。
「言っていることはわかるが、賛同できない」ということを避け、
相手に合意してもらい、そして行動に移してもらうことにより、
プロジェクトは先に進みます。
プロジェクトの一つの到達点は「合意形成」であり、
通常はこの合意形成のために多くの力を注ぎます。

(4)納得してもらう
社内・部内の合意形成が図られ、その内容が実行に移されれば、
とりあえず最低限の目的は達成するかもしれません。
しかし、「言われたから仕方なく」「他に良い案もないから渋々」
「いまひとつひっかかるが・・・」といった状態での合意では、
形の上では前に進んでも内実は変わらない、効果も小さい、
所期の目的に届かない、いずれ元に戻ってしまう、といった結果につながります。
「面従腹背」という非常に好ましくないことも起こるかもしれません。

やはり「納得感」が得られて、その上で合意できれば
より能動的、積極的に新たな行動に移ることができ、
かつそれを継続できる、という形があるべき姿です。
納得した人がさらに他の人を納得させて回る、
ということができればより望ましい循環になります。

本来(3)と(4)は同時であるべきですが、
そうではないケースも多々あると思いましたので、あえて分けました。

書いてみると当たり前のようですが、簡単なことではないでしょう。
そもそも立場や考え方が異なる人、利害が対立する人がいるのは当然で、
全ての人が100%納得することはないと思います。

ですから100%ではないにしても、
意思決定者、そして実際に手を動かしてくれる現場の方々の
「納得感」を可能な限り高めることを目指します。
いわゆる業務改善、仕組み再構築のようなプロジェクトの場合、
目標とする到達点はここではないかと思います。

3.コンサルタントの資質との関連

この文章は上記の野町の原稿ができた後に書いています。
野町がコンサルタントとして欠かせない3つの資質を挙げましたが、
私も全くその通りだと思います。

そしてコンサルタントが相手に納得感を持って話をできるようになるには、
野町が言う「やりぬく力」が特に重要と思います。

お節介かもしれない、頼まれていない、ということであっても、
こだわりを持って顧客のためにやり遂げる、というマインドが不可欠と思います。
こだわりがあるからこそ、
「それではまだ納得感が足りない」「自分が納得するまで妥協しない」
という姿勢になります。
それが体現できれば相手も信頼してくれるようになり、
こちらが発信する内容にも納得感がついてくると思います。

4.購買活動において

以上のことは、特にコンサルティングに限らず、一般に会社で仕事を進める上でも、
また仕事ではなく、何らかの目的をもって集団で行動するような場合でも、
あてはまることと思います。

蛇足ながら購買活動の視点でも考えてみます。

売り手の場合、顧客に単に買ってもらうのではなく、
「納得して買ってもらう」ことが重要でしょう。
単に「他に良いものがないから」「他社より安いから」
(安いけど品質やサービスには納得していない)という理由で買ってもらっても、
売上にはなりますが、次も買ってくれるとは限りません。
逆に納得して買ってもらえれば、継続受注や他の顧客も紹介してくれる、
といった波及効果につながるかもしれません。

買い手の場合、購買する立場としては可能な限り「納得して買うこと」が理想であり、
仕方なく、ではなく、「このサプライヤのこの製品だからこそ買う」という
購買活動ができればよいと考えます。


ただ実際には、要求する仕様・品質を満たし、価格も安く、サービスも良い、
これがベスト、といった納得できる事例は多くないかもしれません。
アンテナを広げて情報収集し、多くの選択肢を持つことも大切ですが、
まずこちらが納得できる条件は何か、その優先順位は、などを
予め決めることが最初の作業になるでしょう。

さらに逆の視点で、サプライヤに「納得して売ってもらう」
という努力もあるべきでしょう。
端的に言えば価格交渉であり、仮にサプライヤと交渉して
価格引き下げに成功したとしても、可能な限り、サプライヤが「渋々」ではなく、
「納得して」価格引き下げに合意できれば理想です。

そのためには買い手側の努力が必要で、サプライヤに
「納得感を与えること」を念頭において交渉することが一つの指針になります。
それによって、サプライヤとの関係も損なわずに、
取引の継続、さらなる好条件の獲得につながるのではないかと思います。

(大塚 真太郎)

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■ 【お詫び】

前回のメルマガ「コスト削減の功罪」で
読者の方に誤解を与えるような表現がございました。

「各社とも赤字決算が続いているだけに、
少しでも早く黒字転換を図ろうと努力していることが伺えます。」

「各社とも赤字決算が続いているだけに」という表現が
特定の企業を指しているように読めますが、
「一般的な経済情勢」を表現したもので
特定の企業で赤字決算が続いているものではございません。

この場をお借りしましてお詫びさせていただきます。


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