2009.9.18号
「不正支出を防いで購買業務を進化させよう/外部研修の難しさ」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2009.09.18 ────

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 ☆今週のメッセージVol.1「不正支出を防いで購買業務を進化させよう」
 ☆今週のメッセージVol.2「外部研修の難しさ」

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■ ☆今週のメッセージVol.1「不正支出を防いで購買業務を進化させよう」
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理研主任研究員、背任容疑で逮捕 1100万円架空発注(asahi.com)
 文部科学省所管の独立行政法人「理化学研究所」(埼玉県和光市)で
 研究用物品を架空発注し、約1100万円の損害を与えたとして、
 警視庁は8日、同研究所主任研究員を背任容疑で逮捕し、発表した。
 精密機器会社「秋葉産業」(東京都豊島区)の代表取締役も同容疑で逮捕した。

千葉県で不正経理30億円 県警含めほぼ全部局(asahi.com)
 千葉県で03〜07年度の5年間に、 物品を発注したように装って
 代金を業者の口座にプールするなどの不適正な経理が
 約30億円に上ったことが、県の調査で判明した。
 職員の記憶がはっきりしないなどの使途不明金も約1億1千万円にのぼり、
 私的流用の可能性もあるという。県は9日、調査結果を公表する。
 不適正な経理が発覚したのは、知事部局や水道局、県警など
 「県所属機関のほとんど」(県総務課)。
 物品が納められていないのに納入されたことにして代金を支払い、
 業者に管理させる「預け金」や、業者に事実と異なる請求書などを提出させ、
 別の物品を納入させる「差し替え」など、
 会計検査院の検査で「不適正」と区分される項目に該当したという。
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このように不正支出、不正経理の問題が相次いでいます。
どちらも公共セクターにおける事案であり、
かなりの問題になっていると同時に相当な怒りを感じている方も多いようですが、
民間でも不正支出や不正経理は明るみになっていないだけで
頻繁に起こっている可能性は低くありません。
以前某国営放送社は不正支出が問題になり受信料の支払拒否が相次ぎ、
いわゆる民間企業での売上高が激減しました。
その額は試算によると150億円という大きな規模になっています。

このように不正支出は企業団体の内部だけの話でなく、
ブランド力や株主リスク、企業収益にまで影響を与えるようになっています。

不正支出を防ぐ方法としては大きく事後的な「監査」と
プロセス、ルール、役割、ITシステムなどによる「仕組み」によるものの
大きく2つの方法が考えられます。
最近の内部統制の強化は金融商品取引法の考え方は
「仕組み」としてリスクを回避していこうという考え方であり、
企業団体としても不正支出を「仕組み」で回避する必要がでてきています。

それでは不正支出を回避するための「仕組み」を作るポイントは何でしょうか?

一つ目は「五権分立」であり、二つ目は「適正なプロセスの整備」です。
これは私が大分昔からセミナーや著書などで
繰り返し述べていることなので既にご存知な方も多いとは思います。

一点目の「五権分立」についてですが、これは
 1.予算執行
 2.仕様決定
 3.購買契約・発注
 4.受入検収
 5.支払
の五つの役割・機能を分権する必要があるということです。

通常、
1.予算執行は「費用を支出するための権限」であり、
逆に言うとお金を使うことで得る効果を最大化することが役割です。
通常は要求元や製造部門がそれにあたります。

2.仕様決定権限は「要求元の要望」に基づき、
「購入品やサービスの詳細仕様を決定する権限」であり、
当然のことながら最適な仕様を選定する役割があります。
通常はパソコンの仕様を決定するIT部門や、
製造業で言えば設計部門がそれにあたります。

3.購買契約・発注は「要求元の要望」に基づき
「仕様決定者が決定した仕様」のものを
「どこからいくらで、どういう条件で買うかを決める権限」であり、
購入条件をいかによくしていくかを決定する役割があります。
つまり、何をどこからいくらで購入するのかを決める役割であり、
通常は購買部や調達部、場合によっては総務部に分散していることもあります。
ここで注意しなければならないのは、「購買契約・発注」と言っても
あらかじめ決定している契約条件に基づいて発注書を発行していることが
「購買契約・発注」業務ではなく、単なる発注書発行業務だということです。

4.受入検収は文字通り「納品された物・サービスを受領、検品する権限」であり、
発注したものが確かに納品されているかどうかを確認する役割です。
通常は検査部や生産管理部、資材部が行っています。

5.支払は文字通り「支払」であり通常は経理部門が会社を代表して
各部門の支払依頼を受けて支払を行っています。

このように五権がそれぞれ分権していれば、
「無駄な支出を抑える」「無駄なオーバースペックを抑える」
「適正な支払を行う」「納品されていないものの支払を行わない」
「適正な金額を支払う」という抑制がそれぞれ働きます。
つまり馴染みの業者に納品されてもいないものの支払を行い
バックをもらう、とか必要以上のお金を請求、支払いしバックをもらう、
といった不正な支出を仕組みとして防止することができるのです。

但し、業務委託や委任契約、顧問契約等のサービスについては
「受入検収」を要求元、つまり予算執行者が行うケースが多いです。
これは材の性質上第三者が検査を行うことが難しいためであり、
このような費目での不正支出を防ぐのは容易ではありません。
代替的に「受入検収」を複数の人が承認するようにしている企業も少なくありません。

二点目の「適正なプロセスの整備」ですが、
これは上記の五権分立を担保できるプロセスを明確化し、
それをルールとして適用させることです。
皆さん一度はプロセスフローというものをご覧になったことがあるとは思いますが、
ISOやそれ以外の購買規定などで周知徹底させることが必要です。
プロセス整備をする上で重要なのは「適正な」という言葉であり、
品目別や金額基準等を設けて厳しく管理するプロセスと
そうでないプロセスを用意しておく必要があります。

上で取り上げた2つの「仕組み」つくりにおけるポイントは
何も不正支出を防ぐためだけのものではありません。
役割権限を分権化し、それぞれが責任を持って最適化を図る、
また購買・調達部門は要求元の支出の必要性や、
設計部門の仕様決定についてもコミュニケーションをとりながら最適化を図る、
このような姿は「購買業務のあるべき姿」そのものなのです。
つまり、五権分立は何も内部統制や購買管理、不正支出防止のためだけの
取組みではないことが理解してもらえたのではないかと思います。

要するにタイトルの
「不正支出を防いで購買業務を進化させよう」につながるのです。

冒頭で千葉県の不正経理の問題についても取り上げました。
詳細がまだ公開されていないのではっきりしたことは言えませんが、
このケースでは、分権化していても不正経理は防げないと思われます。

何故なら、五権を分立しても役割・権限を持っている人が機能せずに結託した結果、
こういう事件が起きているからです。
そう考えると「監査」「仕組み」に加えて「人間」も
不正を防止するための大きな要素なんでしょうね。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「外部研修の難しさ」
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このメールマガジンでも幾度かご案内させて頂いておりますが、
今年から弊社では調達・購買部門の人材育成事業を強化しています。

その一環として、まだ試行錯誤しているところではありますが、
調達・購買部門の様々な方を対象にセミナーを開催し、
参加された方からは、概ねご好評を頂いています。

とはいうものの、昨年来の景気状況のため、
多くの企業で教育関連の予算が削られているようで、
大盛況というよりは、比較的こじんまり開催していますが、
それはそれで参加者と密なコミュニケーションがとることができるので、
悪いことではないと感じています。

さて、ここで指摘するまでもありませんが、
企業にとって、人材育成は常に重要な課題であり、多かれ少なかれ
人事制度等の中に組み込まれて体系化されていることでしょう。
その上で社内のOFF-JT、OJTだけでは足りない部分を補うために、
外部の研修を利用するということが多いのではと思われます。
特に昨今は、OJTを担う現場が多忙のため、
OJTが効果的に行われていないという状況もあるようで、
外部の研修機関に対する潜在的なニーズは高まっているのではと考えています。

景気の良い悪いに関わらず、常に人材育成は行われるべきでしょうし、
そのための費用(予算)は一定額はあってしかるべきと思いますが、
景気が悪くなると教育関連の予算が削られてしまうことが多いようです。

その理由は明らかで、費用対効果がわかりにくいという1点に尽きます。

例えば、弊社の「調達・購買業務基礎」セミナーは、
主に調達・購買部門向けに配属されたばかりの方や、
一度知識を網羅的に整理してみたい方等を対象とした
1日コースプログラムですが、1人35,000円という価格設定です。

弊社として価格設定が妥当かどうかは別の問題としてありますが、
参加させる企業からすると、
参加者の方には丸1日業務をさせることができないわけですから、
実際として
「参加費35,000円+1日分の人件費+1日業務を行わなかったことによる損失」
が費用として発生します。
(細かいことを言うと、さらに会場までの交通費等の諸経費も発生します)

ということで費用はかなり明らかであるにもかかわらず、
効果が見えにくいというのがこの問題の悩ましいところです。
最近では研修の効果を測定する取り組みも行われているようですが、
なかなか難しいのではないかと想像します。

外部研修を利用した結果で、最も効果の出ている姿は、
1)研修機関が品質の高いプログラムを提供し(当たり前のことではありますが)、
2)それを参加者の方がしっかり理解し、
3)さらにそれを社内にも広げ、
4)社内のレベルが向上し、
5)そのような活動を継続的に行う
といったところでしょうか?

ここまで行われると感覚的には費用対効果があるような気がしますが、
結局1〜5のどれも定量的に測ることが難しい以上、
どれだけ効果があったか具体的には良くわかりません。
ましてや、セミナーの内容が悪かったり、
参加者の方が理解できなかったといった場合は、
発生した費用を完全にドブの中に捨てるようなものですし、
そのようなリスクは意外と高いのかもしれません。

少なくとも弊社としては、当然のことではありますが、
 『品質の高いプログラムを提供し、
 参加者の方がしっかり理解をできるようにフォローすること』
を着実に進めつつ、
更によりよいサービスを提供していく努力をすることが必要だと感じています。

(高橋 和昭)

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