2009.2.13号
「ウエッジシェアリングと物を買う無駄の排除/サプライヤ・リレーションシップ」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2009.02.13 ───

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  ☆今週のメッセージVol.1
          「ウエッジシェアリングと物を買う無駄の排除」
  ☆今週のメッセージVol.2
          「サプライヤ・リレーションシップ」
  
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■ ☆今週のメッセージVol.1
■□        「ウエッジシェアリングと物を買う無駄の排除」
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最近「製造業の派遣切り」の問題がどこのTV番組や国会中継でも
大きな問題として取り上げられています。
ある番組では今こそ「ワークシェア」だけでなく
「ウエッジシェア」を考えるべきであるという論調もありました。

「ウエッジシェア」とは賃金を減らし、
多くの人で賃金をシェアすることで
失業者を出さないようにしていくという考え方です。
私自身この言葉を知らなかったのですが、
実は日本企業はこの「ウエッジシェア」を
今までも多様してきているのでは、という印象を持ちました。

今回はあくまでも何かの統計資料などで裏付けをとった話ではなく、
私の実感によるものなので間違っているかもしれませんが、
その前提で聞いていただきたいと思います。

90年代前半のバブル崩壊以降、日本経済は金融不況に陥りました。
元々、銀行、保険、証券会社が高給で有名だったと記憶しています。
私の大学卒業時には優秀な学生は殆ど金融に就職するような状況でした。
実際にメーカーに就職した私の給与と
金融に就職した友人の給与を比較すると
1.5〜7倍程度も友人の方が高かった記憶もあります。

金融機関は金融不況を乗り越えるために
大幅な「ウエッジシェア」をしました。
実際に友人からは「30代前半から給与は下がる一方」という話を
聞いたこともあります。
金融機関の事務職の派遣社員化が一気に増加したのもそのころ。
つまり金融機関は90年代の金融不況を乗り越えるために、
正社員の絞り込みと正社員の「ウエッジシェア」を行い、
どうにかこの危機を乗り切ったのです。

一方で製造業は歴史的に給与が低い業界だったのですが、
それが2000年初頭から大分変ってきました。
製造業でも一時のリストラからの転換で
中途社員の採用を積極化したのです。
この当時は人材紹介会社に言わせると
バブル期以上の売り手市場だったとのこと。
製造業は優秀な社員の採用や引留めのために
大幅に賃金を増やしていったのです。
この当時の正社員賃金の源泉は
現場や事務作業の派遣等の契約雇用化であったと考えられます。

現在、製造業の製造現場や事務職社員の殆どは
派遣、請負という契約形態の方です。
これは90年代の初頭には全く考えられなかった。
私が入社したころは
「自動車会社で一番いいボーナスをもらうのは現場である」と言われ、
それが当然だと思っていました。
今は、全くそういう状況になっていないのです。

ここまで述べてきましたが、
経済学的に言うと賃金は「下方硬直性」を持っていて
一番下がりにくいものであると言われてきました。
しかし私は実はそうではないのではないか、と思っています。
実は一番てっとり早く手が打てるのが賃金なのです。

日本企業はこの20年間に
大きな構造改革を成し遂げてきたと言われていますが、
実は一番手っ取り早い調整弁としてウエッジシェアを含む人件費に
目をつけただけだったのかもしれません。

一方で、外部への支出に対して目を向けている企業は多くないです。

外部への支出の抑制、無駄の排除は難しいものです。
効果もいつでてきているのか計測しづらい。
手っ取り早い予算カットだけではなく、
費用の妥当性や費用対効果の検証、
企業文化として支出抑制を根付かせていく、
このような活動は継続的であり、たいへん難しいのです。

ですから、多くの企業は
手っ取り早く費用が削減できる人件費で調整しようとするのです。

しかし人件費の調整は
今回のような景気悪化の局面で人員構造面等の多くの点から
ひずみを生み出します。

今回の局面でどれだけ日本企業が支出の最適化に目を向け、
てっとり早い賃金調整から脱皮していくか、に私は注目しています。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2
■□ 「サプライヤ・リレーションシップ」
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SRM(サプライヤ・リレーションシップ・マネジメント)という言葉は、
購買業務に係わっている方々は、
耳にタコが出来るほど聞いているかと思いますが、
今回はあえてMを取った
サプライヤ・リレーションシップについてお話したいと思います。

皆さんはサプライヤとの関係をどのように維持していますか?
単なる出入りの業者的な位置付けとして対応していますか?
戦略的なパートナーとしての位置付けで対応していますか?

最近ある企業のお手伝いで、サプライヤを訪問する機会が増えています。
サプライヤとの定例的な情報交換の場を設けている企業もあれば、
ここ数年全くコンタクトをしていない等、色々なケースに遭遇しています。

今回は後者のケースをご紹介します。

取引(契約)内容の詳細を調査するため、あるサプライヤを訪問しました。
十数年間の長い間取引をしており、
バイヤー企業にとっては重要なサプライヤです。
過去の取引データの詳細も準備しており、
非常に好感のもてるサプライヤでした。
ところが請求単価の話になると、契約書や単価の取決めも存在しないまま、
過去からずっと一定金額を請求しているとのこと。
購買実務の担当者とは日頃の受発注の連絡はしているが、
価格の交渉や定期的な情報交換等は双方でしていないとのことでした。
発注品目の増減や環境の変化があるにも関わらず、
双方暗黙の了解で取引をしていたようです。
前任者からの引継ぎでそのようにしているとのことでしたが、
とてもグレーな取引であることが判明しました。

またあるサプライヤは、
技術進歩や企業努力による色々な提案を過去にして来たようですが、
バイヤー企業が提案内容をそのまま他のサプライヤに流し、
安く作らせていたようなケースもありました。
単なる業者としての位置付けで取引をしているありがちな例ですね。
そのサプライヤからすれば、
何の為に営業をしているのかと疑問を持つのも当然です。

そこで再認識したのが、「サプライヤを知る」ことは
重要な購買業務の1つであるということです。
皆さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、
それが出来ていない企業もまだ多数存在しています。

サプライヤを訪問し、現場の環境を見る。
サプライヤの技術進歩をチェックする。
定期的な情報交換の場を設ける。

挙げれば多数の必要項目が出てくると思います。

目先のコスト削減も大切ですが、
サプライヤとのより良い関係を継続しつつ、
共に成長しゆくスタンスも大事ではないでしょうか?

SRMソリューションを導入し必要な情報を集め、
先進的な管理購買を実現している企業が存在していることも確かです。
またそれが経営戦略上、非常に重要な役割を果たしているのも事実です。
定期的に訪問したり意見交換の場を設けるのは
時間の無駄であり効率的ではない、と言う方もいらっしゃるとは思います。
しかし時には原点に戻り、
サプライヤとの関係構築に時間を費やすことも必要ではないでしょうか。

ある企業の購買部長は「購買は営業だ!」とおっしゃっていました。
まさにその言葉の意味を実感した瞬間でした。

(石井 守)

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