2008.5.16号
「交渉しない技術/第93回ISM年次大会について」

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        「目指せ!購買改革!!」     
      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2008.5.16────

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  ☆今週のメッセージVol.1「交渉しない技術」
  ☆今週のメッセージVol.2「第93回ISM年次大会について」

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■ ☆今週のメッセージVol.1「交渉しない技術」
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以前、ある優秀なバイヤーさんと話をした時に
「私は交渉はしない」という方がいらっしゃいました。

その時は「そういう人もいるんだな」程度で
あまり深く考えていなかったのですが、考えてみると凄いことです。

坂口さん的に言いますと
「“利益”と“仕入れ”の仁義なき経済学」であり、
営業は一円でも高く売ることを考え、
バイヤーは一円でも安く買うことを考えています。

そういう中で「交渉しない」とともすれば
「高く買う」ことにつながるでしょう。
それでは「交渉しない」で「安く買う(というか高く買わない)」ことは
どうしたら実現できるでしょうか?

先週末に購買ネットワーク会の幹事の方が主催する
「材料費高騰とたたかうバイヤーの集い」なる会に参加してきました。
現場バイヤーの方々が昨今の材料高騰に如何に対応しているか、
という興味深い議論で色々な点で参考になりました。

この会の模様については別途また書きたいと思いますが、
その中でたいへん興味深い話を聞くことができました。

昨今の材料費高騰の中、多くのケースでまずはA4一枚で
「昨今の原材料の高騰で・・・自社にてコスト高騰を吸収してきましたが、
企業努力も限界に達し・・・AAにつきまして○%(×円/Kg)の
価格見直しをお願いいたします。」的な要請があり、
それに対しサプライヤさんには便乗値上げを抑制すべく
「値上げの根拠を提出してくれ!」と当然のことながら求めるわけです。

一方で、コストアップ要請額の妥当性を評価するため、様々な市況情報から、
バイヤー側でもコストアップ額の幅、時期を推計します。

その過程であるバイヤーさんがおっしゃるには
「コストアップ推計をすると、ほぼサプライヤの値上げ要請額になる」
ということでした。
またそういう方が一人だけでないことも分かりました。

実はこれは非常に興味深いことで、
サプライヤさんが「いい加減な見積り」を出していない。
ということの証明になるわけです。

先の優秀なバイヤーさんが「交渉しない」と明言されたのは
「いい加減な見積り」が出てこないから
「交渉する必要すらない」ということなのです。

日頃出てきた見積書を赤鉛筆で修正しているだけのバイヤーに対しては、
100円のものを120円で見積書を出し、20円査定されて、
当初考えていた100円で売る、というサプライヤ側の思惑に
まんまとはまってしまいます。

それに対して、自分で軸を持ち、物の価値やコストを推計する能力がある
優秀なバイヤーに対しては「いい加減な見積り」は出せなくなります。

つまり優秀なバイヤーであれば「交渉する必要すら」なくなるのです。

このような環境を作ること、
これもバイヤーにとっての重要な「交渉しない技術」なんだな、
と再認識しました。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「第93回ISM年次大会について」
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5月初旬に開催されたISM年次大会に参加しましたので、
今日は簡単な紹介と感想を書きたいと思います。
メールニュースでは、文字数の制限がありますので詳細報告は
別途したいと思います。
*ISM:Institute For Supply Management/米国サプライマネジメント協会

ISM年次大会とは、ISM(以前のNAPM-購買管理協会)が毎年開催する、
サプライマネジメントに関する研究発表を目的とする国際会議です。
今年は5/4〜5/7の4日間に渡り、セントルイスにて開催されました。
発表者は、調達を含むSCM等を研究する大学または
大学院の教授、実務家、コンサルタントであり、
参加者は世界各国の購買担当者、学生、経営者等です。
今年の大会参加人数は約2,400名、
日本からの参加者(事前登録者)は2名でした。
なお、お隣の韓国からは20名以上が参加されていました。
(大半はLG様またはSamsung様でした)

会議方式は、基調講演の他、将来の購買のあり方、新しい資格制度、
CSR、調達BPO、SRM(Supplier Relationship Management)と
Alliance等のテーマ毎のセッションが、60分から90分間隔で開催され、
発表者が講演後、質疑応答するというものです。
また、参加者は、事前登録をすればどのセッションにも参加可能であり、
夜は懇親会も開催されていました。

会議に参加して印象深かったことは、次の3つです。
 ・購買に要求される役割とスキルの変化
 ・アメリカ標準ではなく世界標準を志向していること
 ・新資格制度(CPSM)への注力

1つめの役割の変化についてです。
旧来型のPurchasingやSourcingの役割である
“決められた仕様の案件をいかに安く調達するか”から、
“サプライヤとの中長期的な関係を構築し、サプライヤと共に成長する”
というAllianceの構築に近い役割へと変化しているということです。
この期待される役割の変化に伴って、
購買に必要とされるスキルも管理者としてのスキルから、
サプライヤと自社関連とのファシリテーターとしての
スキルへと変化してきています。

2つめの世界標準についてですが、発表内容や現地で購入した文献には、
米国企業に混じって、日本企業の優れた事例が多数引用されていました。
やはりアメリカ標準というよりも、世界標準を志向していることが分かります。

最後に、今年ISMが注力していることに、
新資格制度(CPSM:Certified Professional Supply Management)の
立ち上げがあります。
購買の役割の変化に伴い、従来ISMが認定していた資格であるCPMは、
本年12月をもって試験を終了し、より広い範囲の役割を持つ
「CPSM」へとアップグレードされることになります。

会議全体を通して、旧来型の購買の役割から、
新しい役割へと変化していること、
そして世界標準へと舵を切っていることが伺えました。

以上、簡単ですが今回はISM年次大会へ参加しての感想を書いてみました。

(鬼沢 正一)

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