2008.4.4号(トータルコストの最適化/無駄を生み出すバイヤーの弊害)

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      〜調達購買マネジメント最前線〜
──────────────────────── 2008.4.4 ────

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  ☆今週のメッセージVol.1「トータルコストの最適化」
  ☆今週のメッセージVol.2「無駄を生み出すバイヤーの弊害」
  
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■ ☆今週のメッセージVol.1「トータルコストの最適化」
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最近よく考えることの一つに「最適コストの実現」というものがあります。

今回は「最適コストの実現」をする上で重要になってくる
「トータルコスト」の視点について話をしたいと思います。

よく色々なコンサルティング会社が
“「トータルコスト」の低減を考えなさい”ということを言うと思いますが、
「トータルコスト」って何でしょうか?

よく言われているのは、本体価格A+付帯コストBであり、
付帯コストBの中には物流a、在庫b、品質c、輸入諸掛d等の
コストが含まれると言われます。

つまり
付帯コストB=物流コストa
       +在庫(保管に係わる)コストb
         +品質(不良等の対応にかかる)コストc
           +輸入諸掛(通関他)コストd ということです。

海外からの調達を検討する上では、このような付帯コストも含んだ
“「トータルコスト」での検討を進めなさい”ということになるのです。

しかし、この「トータルコスト」の中には重要なコストが含まれていません。

例えば「在庫」の保管に係わるコストだけでなく
「デッドストック品」のコスト。
これは何らかの段階で棚卸減耗損としてコスト計上されます。
つまり苦労して1円、10銭単位でコスト削減を果たしても
1個余計に買ってしまい、それが使われなければ、廃棄コストに計上されるので、
このようなコスト削減などは水の泡になってしまいます。

それから「返品」コスト。
これはどちらかと言えば最終消費財等の業界で特徴的に発生しますが、
最近は顧客満足度を重視し“いつでも返品可能”という企業さんが増えています。
返品されたものを再利用できれば再生コストだけが発生しますが、
多くの場合再利用できずに廃棄するケースが多いです。
これらの廃棄コストも大きなコストになります。

また、使用後の「廃棄」に係わるコスト。
部品は製品という形になって使用され、
何年か経ち、再利用されるか、捨てられるか、消費されるか。
当然のことながら、
収集→分別を配慮した製品−部品であれば再生・再利用ができるので、
廃棄コストから再利用の価値コストを差し引いたものが
実質的なコストになります。

食品・飲料メーカー等の購買の方はご存知だとは思いますが、
包装容器リサイクル法で収集・再生にかかるコストはばかにならず、
実際多くの金額を企業が負担しています。

もう少し考えてみましょう。
コストというのは、価値を生む源泉です。
価値は時間とともに逓減します。つまり時間でコストは逓増します。

分かりやすい事例として、自動車の例を取り上げましょう。

自動車の耐用年数は5年です。
つまり200万円の乗用車でコストが100万円だった場合、
5年で残存価値は0になるので、単純に1年のコストは20万円になります。
しかし、5年後にこれを中古業者が20万円で買い、
100万円で再販したとしましょう。
そうすると再販価値として80万円の価値が新たに生まれることになります。
原価率が50%と想定すると、5年後に40万円の残存価値があることになり、
当初コストの100万円−5年後の残存価値40万円/5年=12万円で、
当初の1年あたりのコスト20万円から8万円のコスト削減になります。

実際には新車の製造販売業者と中古業者は異なりますので、
単純には8万円のコスト削減にはつながりませんが、
現実的には車の部品だけを中古部品として
販売するようなマーケットは存在しますし、
一般的に新品の販売よりも中古品の販売の方が
粗利を稼げる事業であると言われています。
つまり時間当たりの製品価値を上げることで
実質的なトータルコストの削減が可能になるということです。

このように「コスト削減」を考えると
「コスト削減=コスト査定」「コスト削減=競争入札」
だけではないことは明確です。
またコストの最適化を考える上で
「トータルコストの視点」が如何に重要なのかが理解できると思います。

また「トータルコストの最適化」はサプライヤの営業との
勝った、負けたの視点を超えた仕組み作りで考えなければならなく、
返品や廃棄品の再利用、再販などは中長期的なリレーションを前提とした
サプライヤの協力がなければ実現できないことも明確でしょう。

一方で「トータルコストの最適化」はサプライチェーン全体での
ウイン−ウインシチュエーションを実現しながら
実行可能な方策であることもその重要性が高い理由であります。

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol.2「無駄を生み出すバイヤーの弊害」
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以前、多くのバイヤーが参加するセミナーで経験したことです。

参加者に私が作成した資料(100ページ程度)の感想を求めたところ、
某大企業の若手バイヤーは、資料の中に1件だけ見つかった
“フォントの相違”のみを指摘していました。
資料の体裁修正漏れはその場でお詫びし、
改めて“もっと本質的な疑問はないのか?”と質問してみました。
すると、そのバイヤーは
「私の企業では、上司(幹部)に提出する書類は、
ほんの少しでも幹部の好みに合わないと拒絶されるため、
資料の細かいところが整っていないと気になって仕方がない」とのことでした。

私は、この企業は近いうちに大問題を起こすだろうと直感しました。
(実際に1年半後に新聞や週刊誌に掲載される程の大問題を引き起こしました)
なぜなら、人も組織も細かい部分に過度に注意が集中すると、
本当に重要なところで、大きなミスを犯すものだからです。

同様のことが、バイヤーとサプライヤとの関係でも言えます。

バイヤーの中には、次の様な習性を持った人をよく見かけます。
・自分の趣味でサプライヤに何回も資料を作成させる
・自社または自己流の手続きをサプライヤに押し付ける
・自社の契約書を絶対に変えずに交渉を長引かせる

会社の幹部が社員に強い影響力を持っているように、
バイヤーもサプライヤに対して強い影響力を持っています。
このため、バイヤーも知らず知らずのうちに、
サプライヤに無駄の連鎖を発生させているのではないでしょうか。

産業廃棄物やごみのような無駄は目に見える為、害悪の大きさに気付きますが、
手続きの無駄は気づかない間に蓄積し、サプライヤを疲弊させます。

私はこの疲弊が、将来的にはサプライヤの品質問題やコストアップとして
バイヤーに跳ね返ってくるものだと思っています。
さらに性質の悪いことに、
この疲労は無駄な作業を押し付けるバイヤーの企業だけではなく、
その他の企業にも品質問題を引き起こすこともあります。
この意味で、無駄を生むバイヤーは、自社のみでなく、
世の中全体に害悪を生んでいると言えます。

これからのバイヤーは、自分が無駄の連鎖を引き起こす犯人となっていないか、
もう一度仕事のやり方を見直す必要があるのではないかと改めて思いました。

(鬼沢 正一)

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