2007.06.1号(開発委託の調達/調達・購買戦略)

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      ?調達購買マネジメント最前線?
────────────────────────2007. 6 .1────

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  ☆今週のメッセージVol.1「開発委託の調達」
  ☆今週のメッセージVol.2「調達・購買戦略」
  
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■ ☆今週のメッセージVol.1
□ 「開発委託の調達」
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今回は、製造業における開発委託の調達について話をします。

製造業においては、
主に社内の開発リソース不足を補うことを目的として、
以前より設計や開発を外部委託してきました。
この設計・開発委託の仕事は、本来調達の一領域なので、
購買部門が窓口となっていましたが、どちらかと言うと
軽視されていた領域だと思っています。

その理由としては、
1.開発委託サプライヤの選定は開発部門の意向が強く反映されるため、
 バイヤーにおける裁量の余地が小さい、また値決めも難しいこと
2.損益に直結する直材の調達で手一杯であり、開発委託の調達に
 深く関与することができない
3.手間がかかる割りにはあまり評価されないこと
などが考えられます。

私が半導体の開発委託の調達を担当していた時のことですが、
あるサプライヤに開発委託した場合は委託料はかなり高いが、
製品量産時の歩留まりと品質が飛躍的に向上し、
損益を改善させた経験があります。
開発委託の調達は、購入コストよりも、購入後の効用によって
大きく評価が分かれることを知りました。

最終製品の品質、コスト、納期のほとんどは開発段階で決まるもの
ですから、開発が企業の競争力を左右するともいえます。
従って、この開発委託の調達をどう戦略的に実施していくかも、
かなり企業にとって重要な領域であると考えられます。

一方、開発委託にあたっては、下記のようなかなり高度な判断を
迫られるケースが多いと考えています。

1.コアとなる技術をもったサプライヤを育成していくか?または、
 確立した技術を持った他社実績のあるサプライヤを選定するか?
 (サプライヤ戦略の課題)
2.製品化した後の評価(費用対効果の課題)
3.取得する知的財産の範囲の決定(企業の知的財産戦略の課題)
4.外部に委託するか?社内でリソースを確保するか?
 (Make or Buyの課題:外部に委託した場合は、開発スピードは
 アップする反面、社内の技術が空洞化するリスクも存在します)

このように開発委託の調達は高度な判断を要求されますし、社内外との
折衝にエネルギーを使います。また、これらを遂行できるバイヤーも
育っていないのが現状です。

企業の開発リソース不足に伴う分業体制の確保を考慮すると、
開発委託の調達はこれからのバイヤーにとってはチャレンジングな
領域であると考えています。

(鬼沢 正一)

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■ ☆今週のメッセージVol.2
□ 「調達・購買戦略」
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調達・購買戦略の話をしたいと思います。

多くの企業で調達・購買戦略なるものが策定されていると思います。
例えば、『CR目標、3年で30%』とか『グリーン調達比率XX%』、
『サプライヤとの協同でウインーウインの関係構築』というような
スローガン中心のものが多いと思います。

先般ご紹介しました『世界一の購買部を作ってみろ!!』
(→http://www16.ocn.ne.jp/~fastska/bookshelf.html#sekakou)
でも触れましたし、先日発刊された『強い調達』(注)の中でも考え方が
記載されていましたが、調達・購買戦略の重要な要素は2点です。

1.品目別調達方針
2.サプライヤリレーション戦略

「1.品目別調達方針」については、
『強い調達』では調達カテゴリマネジメントという名前で
語られていますが、非常に重要な視点です。
調達・購買と言っても市況品である鉄、非鉄、レアメタル、
原油、化成品のようなものから、汎用品まで、もっと言えば、
業務委託等のサービス商材まで、直材、間材問わず、いろいろな
品目が存在します。
これらの品目を同じ戦略、方針で調達することは不可能です。

場合によっては、
品目毎に内外製の方針をどうしていくのか?
コアとなる技術を社内で育成するのか?
それとも時間を金で買う方針でサプライヤと共同開発していくのか?
サプライヤの事業買収も含め、その品目にあった形で戦略、方針を
策定し、施策に落として、施策を実行していくことが必要に
なるからです。

こういう視点から調達・購買戦略は企業の技術、事業戦略に深く
関連するものでなければならないのです。

ソフトウエア購買については、特に最近その調達・購買戦略の策定に
ついて課題が多い品目になると思います。
自社開発、共同開発、外部への委託、特に近年の製品は、
ハードウエアだけでなく、組込みのソフトウエアがあって初めて価値を
持つものであり、この分野の調達・購買戦略をどうたてていくか?
という点は今後10年間の企業の競争力を左右していくのではないか、
と思っています。

そのための基本となるのが層別化です。
品目の定義と層別化をどういう機軸で行うのか?という点で、
従来の4つのマトリクスではあてはまらない層別化を今後も
色々な方法論を用いながら模索していく必要があると考えています。

「2.サプライヤリレーション戦略」については、
「1.品目別調達方針」にも絡んできますが、それぞれの品目に対して、
協業と競争、育成の方針を定めていくことが基本的な考え方です。
従来の「系列取引」にはそれなりのメリットもありましたが、
一方で品目別の調達方針との齟齬が「系列」を負の資産にしてしまった
というのが現在の状況であると思います。

例えば、それほど技術的に重要な品目でないのにも関わらず、
複数社の「系列」企業が存在し、「準内製」の位置づけで取引を
続けてきた結果、タコツボ化し、横比較でグループ内の
コスト低減活動には使えるが、他グループとのコスト競争力では
負けてしまい、気がつけば競争力がない「系列」取引だけが
残ってしまっている、というような状況です。

「2.サプライヤリレーション戦略」は、
本来「1.品目別調達方針」とマトリクスの関係になっている
必要があります。
つまり、ある品目Aはコスト重視であり、複数のサプライヤを集約させ、
準内製として位置づけ、サプライヤと共同でサプライチェーンや
開発の共同作業も含むトータルコスト低減を推進していく、
といった方針です。

本来であれば、このようなマトリクスが調達・購買戦略の基本であると
考えられます。

製品の技術革新や競争環境のグローバル化は、調達・購買部門に
より多くの機能を求めるようになってきています。
一方で「戦略」を明文化し、共有していく(社内外に対して)ことの
重要性も一層増してきていると考えています。

(野町 直弘)


(注)参考文献
『強い調達』:アクセンチュア調達戦略グループ著、
      東洋経済新報社、2007年


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