2007.03.02号(購買部は必要か?/公共調達のあり方について?最高裁の調達プロセス?)

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        「目指せ!購買改革!!」     
      ?調達購買マネジメント最前線?
────────────────────────2007. 3 .2────

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  ☆今週のメッセージVol1「購買部は必要か?」
  ☆今週のメッセージVol2「公共調達のあり方について
              ?最高裁の調達プロセス?」
  
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■ ☆今週のメッセージVol1
■□ 「購買部は必要か?」
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このメルマガやブログの読者の方は多分、殆どが
企業の購買部なる部署の方々だと思います。
ですので「購買部は必要か?」というタイトルを見られて違和感を
感じている方も多いかもしれません。

購買部は企業の中で外部への支出の大部分を管理、発注を
行う部署です。企業によって様々な呼び方があると思います。
「購買部」、「調達部」、「資材部」、「ソーシング」、
「プロキュアメント」、「パートナー管理部」・・

いずれにしても、大部分の製造業には所謂『購買』機能を持つ
組織があると思います。
ただ、これが日本企業の中で過半かというとそうでもないかも
しれません。

中小企業や非製造業においては営業部や経理部は殆どの企業に
存在するとは思いますが、購買部が存在する企業は殆どないと
考えてよいと思います。

平成16年に行われた総務省の「平成16年事業所・企業統計調査」に
よると、日本の法人は153万社あるようですが、
そのうち150.6万社(98.4%)は資本金1億円以下の中小企業です。

業種別には、資本金1億円以上の製造業の数は約7,100社(0.5%)と
マジョリティではありません。

そうやって考えると、製造業他業種で購買部がありそうな企業は
約9200社(0.6%)、昨年のアジルアソシエイツで行った
アンケート調査で購買部門の従事者は全社の約4%程度が中心値で
あったことを考えると、購買部なるものの従事者は約64,000人程度
で日本の全企業の従事者約2,000万人うちの0.3%にしかすぎないのです。
(ちなみに64,000人というと鹿嶋アントラーズの本拠地の鹿島市
の人口や埼玉スタジアムの収容人数とほぼ同じです。)

なんとスモールワールドなのか!!
(こういうスモールワールドを相手に商売をやっている会社も
会社ですが。。)
それでも企業経営は回っている。。

本当に購買部は必要なんでしょうか?
私のそれに対する意見は、「購買部は必ずしも必要ではないが、
購買機能は必要である」ということです。

特に上場企業では、J-SOX法や新会社法に基づく内部統制強化が
叫ばれています。某国営放送ではないですが、購買プロセスを
管理できていないため、受信料の不払いが相次ぎ、
企業でいうところの売上が激減している状況等を鑑みますと、
今後購買機能を強化し、サプライヤ選定、発注・契約、検収の
徹底等の購買管理を行う方向に各社が進んでいくことは確かです。

一方で、支出最適化という点からも購買機能は重要な役割を
果たします。支出の最適化の方法論は大きく3つに分かれます。
1.競争させる、2.コストを精査する、3.前提条件を変えるです。

従来であれば集中されていなかった支出を企業規模や
グループ全体、もっと言えば他社と共同で購買をすることで
スケールメリットを生かしていく等は、前述の中で
3.前提条件を変える、に該当しますが、現状購買部門が
存在していない中堅・中小企業でも、この3つのセオリーは
当てはまります。
そのためには購買機能をどこかに持つことは必要になってきます。

また、昨今の技術革新が早い時代においては昔以上に
自社で全ての事業活動を行うことが難しくなってきています。
それは生産やノンコア業務だけでなく、技術開発や一部の
コア業務など、資本関係がない企業とも協業を行い事業活動を
行う必要があります。
こういう状況下では、自社の事業活動・事業運営だけでなく、
協業や取引企業とのリレーションはより重要視されていく
方向であり、今後益々その傾向は強くなっていきます。

このように購買機能を大きく捉えるとその重要性は益々高まる
方向であり、どのような企業においても購買機能を強化する
必要性は高くなっていくと考えます。

ただ、一方で、その購買機能が必ずしも購買部という形を社内に
整えることにはつながりません。

社内の総務部、業務部、IT部、開発部の中に購買機能を
持つような形でも構いません。また、親会社のグループ購買に
乗る形で購買部を持たずに購買機能を持つことも考えられます。
もっと言えば、今後増加していくことが間違いない社外の
アウトソーシングサービスに購買機能を担当させることも
考えられます。

いずれにしても重要なのは、購買機能を強化するために
かけなければならない経営資源と、そこから得られるべし
効果とのバランスを検討しながら進めていくということです。

そのための方法論や選択肢は単に「購買をつくる」ということ
ではないというのが私の考え方です。
一方、多くの現状「購買部がない」企業においては、購買機能を
持つことの必要性を認識し、どのような方法で進めていくことが
重要な視点になっていくと思います。

「多くの企業よ。購買機能を強化せよ!」

(野町 直弘)

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■ ☆今週のメッセージVol2
□ 「公共調達のあり方について
■  ?最高裁の調達プロセス?」
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2月中旬の新聞に、最高裁判所の調達に関連する記事が
掲載されていました。
私も今まで最高裁がどのような調達をしていたかほとんど知りません
でしたが、バイヤー業務に関連して考えさせられることもあったので、
参考までに述べます。

記事の概要は次の通りです。
最高裁が、大手広告代理店に委託した「裁判員フォーラム」
(約2年後に開始される裁判員制度に関する広報活動、
委託額約3億4千万円)について、最高裁と大手広告代理店の間で
正式契約締結前に準備が進められており、また、契約の締結も
事後にさかのぼってなされたものであることが判明しました。
これは、最高裁の判例(「国が締結する契約は契約の作成により
始めて成立する」)に違反しており、最高裁自ら判例違反した可能性が
あるというものです。

この記事を読むと、厳格なイメージのある最高裁にしては
プロセスがお粗末な印象を受けますが、重要な問題点は
別のところにあると私は考えます。

以下に述べることは、バイヤーや調達コンサルタントが
実務で直面する課題でもあります。
今回、最高裁は随意契約の1種である企画競争により、
大手広告代理店1社を選定した経緯があります。
ただし、?各社の企画をどのような指標で評価したか、
またそのウエイト付けはどのように設定したか、
?委託した広報活動の費用対効果はどのように評価または予測したか、
?評価者の恣意性をどのような方法で排除したか、
については伝わってきておりません(今国会において、野党が経緯を
質問しているようなので、その中でクリアになることを期待して
います。)。

情報システムや請負、委任等のサービスの調達でも同様ですが、
固まった仕様を提示せずにサプライヤの企画提案を評価しようと
すると、サプライヤからは多様な企画書が出てくるので、
その公正な比較・評価が難しいことは、私にも経験的に
理解できます。しかし、公共調達は民間調達よりも、公平性や
プロセスの透明性が重要なものなので、より公正かつわかりやすい
基準を採用すべきと考えています。

一方で、裁判所を含む公共調達の随意契約リストはウェブ上にも
公開されていますが、随意契約とした理由やサプライヤ選定経緯は、
かなり簡便に記載されており、本当に随意契約しか選択肢が
なかったかについては、一般の人には伝わってきませんし、また、
ほとんど関心も持たれていないと考えています。

「ブラックボックス化すると仕事はルーズになる。
人目にさらされると牽制が働き悪いことはしなくなる。」
というのが人の常です。
最高裁のような公共機関は、調達プロセスをオープンに
すること、一般の人はこれらに関心を持つことが
公共調達改革の第一歩ではないかと思います。
(専門家としてはお恥ずかしい話ですが、私も今回を契機に、
昨年8月に谷垣財務大臣(当時)が各省庁に発信した
通達「公共調達について」の存在を知り、改めて会計法の
条項(民間企業の調達管理規程に近い取り決めを含んだ条項)を
読みました。)
その意味で、今回の最高裁調達の件は、一般の人が関心を持つ
ための良い契機ですし、詳細な実態の解明に期待しています。

(鬼沢 正一)

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