第27回 梅春物

梅春物って何かご存知ですか?
12月から出始める、春向きの洋服のことを梅春物と呼びます。今年は、12月までは暖冬だったので、梅春物の売れ行きが例年に比べ好調だと聞きました。12月、1月に本来の売れ筋であるコートなどが売れず、半そでニットなど軽くてきれいな色目の梅春物が売れたそうです。
本来の梅春物が売れる時期は2月に入ってからだそうです。テレビを見ていると、このころから出演者の装いが春めいてきますが、普通に生活していると、2月はまだまだ寒いですよね。テレビや雑誌が季節の先取りをするからでしょうか、先日、電車の中ではだしにサンダルを履いている若い女の子を見かけました。暖房で春の気候なみに暖かいスタジオの中ならいざ知らず、ドアの開閉のたびに風が吹き込んでくる中央線の中では、かなり寒そうに見えました。でも、本人はいたって平気な顔です。若さゆえ、なのか、もともと寒さに強い体質なのか・・・。

2月に梅春物を着るほど若くもありませんが、私も12月に春夏物のスカートを購入しています。海外ブランドなので、梅春物というよりは、クルーズラインといった方がよいですね。

日本では梅春物とよばれている春物の第一弾を、海外ではクルーズラインと呼びます。クリスマスパーティー用の服や、バカンス先の避寒地でまとう軽い服を指します。船旅や、旅先でのヨットクルーズで着るので、クルーズライン、というのだそうです。クルーズラインは通常の春夏物に比べ生産量が少なく、高めの価格設定になっていることが多いようです。名前の由来からいっても、もともとお金持ち向けに作られていた服、ということですね。

洋服はセールで買うのが一番、と思っている方はクルーズラインや梅春物は全くの対象外でしょう。同じショップで冬物のセール品が並んでいるのに、なぜわざわざ高いお金を出して、次のシーズン物を買うのか、「?」と思うのではないでしょうか。

服飾の仕事をしている友人から、大抵の服飾メーカー、ブランドはシーズン最初のコレクションに力を入れる、と聞いたことがあります。力を入れる、とはデザインももちろんそうですが、縫製もきちんとしている、つまり作りが良い、ということだそうです。最初のコレクションは、前のシーズンのセール後もしくは同時に店頭にでるので、服好きの人は、セールを横目に次のシーズンの第一弾を購入するそうです。

この話を聞いたときは、「ふーん、でもセール品の方が安いしお得じゃん。」と思ったのですが、実際に梅春物や秋冬物の第一弾を購入してみると、結果的に長く着られることが多いということに気がつきました。
セール品は、やはり売れ残りには違いないので、色や形があまり選べず、購入後フル回転で活躍させることができないように思います。早い時期に次のシーズン物を購入すると、まず色、形、サイズが選べますし、(友人の話によるとですが)縫製もよいので、着崩れしない、セール品に比べ高いお金をだして買った服なので愛着もあり、大切に着るので、結果的に長く着られるのだと思います。

こう考えると、洋服の先取り買いは割りとお得だと思いませんか? (先取りして購入した服が、セールで売られていたことがあり、激しく後悔したこともあるので、絶対にお得です、とはいえませんが。)
8月、12月に次のシーズンの第一弾がお店に出始めたら、試しにセール品と並べて手にとって見て下さい。つくりの違いが判るかもしれません。


2005年3月
野尻