第23回 世代交代

私自身、最近の日本のプロ野球をそれ程興味を持って見ていたわけではないですが、昨今のプロ野球経営を巡る動きにはたいへん興味を持っています。
 具体的には巨人の元オーナーであった渡辺氏、西武のオーナーである堤氏の辞任と、楽天、ライブドア、ソフトバンクの新規参入の動きです。両オーナーの辞任は表面的には不祥事の発覚をきっかけとしたものですが、何か経済界全体の世代交代を象徴するような流れのような気がします。両オーナーとも新しい時代に新しい人達に新しい経済社会を期待する思いはどこかにあるような気がしてなりません。

 一方で、楽天やライブドアのような新興企業がこの最も古い(スポーツ)産業であるプロ野球経営に成功するかどうか、という点に関しては私自身正直言って現段階では分かりません。参入して歴史のまだ浅いオリックスの宮内オーナーのようなカリスマ性を持ち、経営センスの優れた人を持ってしても、今のビジネススキーム内でプロ野球球団経営には限界があると言っています。一方、楽天の三木谷氏のように小さいビジネスの積み上げや新しい儲け方を模索することで球団経営を成立させる、という考え方も十分可能性はあると思います。

 一つだけ言えることは、このような新しい企業の新しい取組みを「応援したい」ということです。人間誰もが今までのやり方を変えて新しいやり方をしていくことに対しては面倒であるし苦しさも伴うため、ネガティブになり批判的になりやすいと思います。私自身、会社設立して4期目を迎えますが、自分や会社が変わらない(変えられない)ことにフラストレーションを感じることも多いですし、かなうのであればいっそサラリーマンに戻りたいと思うこともあります。

 私が自分で会社を立ち上げる一つのきっかけになったことに10年程前のある一人の経営者の言葉を聞いたことが上げられます。その方は中古外車の輸入販売で成功しながらも、車好きが講じて自分で工場を持ち自動車(登録車)を作ってしまった人です。

 ある時期「13番目の自動車メーカーとして」マスコミでかなり取り上げられたので知っている方も多いとは思いますが、改造自動車ではなく登録自動車を作るというのは、官庁の多くの規制をクリアしなければならない時間もお金もかかる手続きとなります。その当時、何かの機会で私は前に勤めていた自動車会社の新規事業企画の部長と数人でその会社を訪ねる機会がありました。そこでその経営者は同席した同年代の部長に対してこう言ったのです。

 「人間というのはいつもどこかで限界を感じて壁を作ってしまうものです。そこから一歩踏み出す勇気、これは我々の世代の人は皆持っているが、今の若い人はその勇気が足りないのでは・・」 私はこの言葉に痛く感銘を受け、自分自身がいつか一歩踏み出す勇気を持って行動を起こそうと決意したのです。

 一方で最近懇意にさせている優秀なベンチャーキャピタリストと食事をする機会がありその時に成功した事業家に共通の資質について聞くことがありました。彼曰く「信念を持つこと、それから我慢強さ」この2点を上げていました。多分この「信念を持ち、我慢強い経営者」のうち99%は失敗しているのでしょう。ただこの2つを持たないと成功しないというのも頷けるような気がします。

 「一歩踏み出す勇気を持ち、何かを成し遂げる信念を持ち、それを頑なに守り続ける我慢強さと執念強さ」非常に単純な資質ですが、それを継続して持ち続けることの難しさと、チャレンジし続ける新しい事業家達を今後も応援していきたいと思いませんか?

 それから私自身もこのような資質にこだわりを持ち、人間としての成長をしていきたいと思う今日この頃です。


2004年10月
代表取締役社長
野町 直弘