会社を起業してみてよく感じることがあります。会社は法人なのですが、法人って何なのだろう?法人といいますが、人格があるわけでもありませんし、顔がついているわけでもありません。保険や税金関連等の書類では企業名とともに必ず代表者氏名を記入、捺印するようになっています。代表印はあくまでも会社の印鑑です。資金借入れについても、代表者および保証人による個人債務保証をつけなくてはなりません。また振込等の銀行での手続きでも必ず法人名と代表者名を記入する必要があります。このように様々な手続きでは、会社というものは人格を持っていないため、その代わりに代表取締役という人が責任を持つという意味があるのかもしれません。(専門家に言わせると違うのかもしれませんが・・)
このような経験から私が感じるのは、会社という存在自体は非常に曖昧なもの、ということです。そこでテーマにある疑問がでてきます。「会社って何?会社のアイデンティティって何?会社の存在意義って何?」皆さんはどう考えていらっしゃいますか?
1980年代の後半に所謂CI(コーポレートアイデンティティ)とかビジョンの構築というテーマに取組む企業が多くありました。でも社名や会社の商標、目指すべき姿=特定の企業とはどうも当てはまらないような気がします。企業イメージやブランド力など非常に大切なものであることは確かですが「ソニーって何?」「トヨタって何?」「アジルアソシエイツって何?」と社員が問われた時に、それは「デジタルドリームキッズです」って答えるのかと思うと違うような気がします。「世界一儲かっている自動車を作っている会社です」っていう方がむしろ多いかもしれませんね。
実は最近よく思うのですが、会社っていうのはオフィスとか、工場とかの建物やその場所をイメージされる方も多いのではないでしょうか?
最近東京の都心部で新しいオフィスビル等の建設ラッシュがあり、多くの企業が移転を進めています。一方で最近のような大規模なオフィス街の開発では人の流れを大きく変えてしまいます。品川駅の港南口の朝・夕のラッシュなどはその代表的なものでしょう。何があっても朝会社に出勤し、夜帰宅する。このような一般的な行動パターンを見て、通勤ラッシュに会いながら痛勤していると、どうも会社とは、「自分の居場所=建物、工場」というような気がしてなりません。
一方で我々の会社ではそもそもオフィスに来ることを社員に強制することもありませんし、顧客先で仕事をすることが多く、また自分が仕事をやりやすい場所で仕事をすれば良いと社員には言っています。オフィスも10坪程度のマンションの1室を使っていますし、一日中誰もオフィスに居ないこともたびたびあります。あまりオフィスに対する帰属意識は持っていないと思いますし、オフィスがあるから行かなくてはならない、という状況にはしたくないと思っています。
私は、会社のアイデンティティとは働いている社員個人のアイデンティティの集合体であると思っています。ただ企業にとってもっと大切なものは、生み出す付加価値なのではないかと思います。そういう意味で考えると前にコマーシャルでやっていましたが「地図に残る仕事」ではありませんが、企業活動の結果として生み出したもの(「世界一儲かっている」でもいいのですが・・)が会社そのものの存在価値であり、会社そのものなのではないか?と思っています。
我々のようなコンサルティング会社は目で見えるもの、を作ることはありませんが、顧客企業の価値につながるような仕組みなり、意識改革なり、システムなり、報告書なりを残していくこと。企業の収益向上につながるような成果をもたらすこと。これがアジルの存在価値なのであり、アジルそのものだと思っています。起業時に考えていた「真の価値をもたらす」ことの大切さを今一度実感している次第です。