第7回 コンサルタントを使う時

(その1) コンサルタントの立場から
私は大手電機メーカーを経たのち外資系コンサル会社に入りましたが、これまでいくつかのプロジェクトに従事してきました。ここでは、顧客企業に常駐し多くの担当者や管理者と一緒に仕事をした経験から、コンサルティングプロジェクトにおける望ましいメンバ?像について、コンサル会社・顧客企業双方の立場から述べたいと思います。当たり前のような内容もありますが、今後コンサルタントを使う場面が訪れた時に参考にしていただければ幸いです。

プロジェクトと言ってもその内容はいろいろありますが、ここではよくあるケースとして、システム構築やIT技術の導入を伴う業務の効率化や、ITを伴わない業務改善のプロジェクトを念頭におきます。全社プロジェクトを含め、最低でも複数部門を横断する場合が多いです。

1.望ましいタイプ(顧客企業)

まずコンサルの立場から、顧客企業側のプロジェクトメンバ?として望ましいタイプを挙げます。(Aタイプとします)

<Aタイプ>
この5点を備えていることが望ましいです。
?現場経験が豊富である。かつ業務内容を良く知っている。
?現場の問題点(業務、組織、風土等)を良く知っている。かつその問題点を改善する必要性を感じている。
?規模に関わらず、「変化」に抵抗感が無い。「変化」に対して前向きである。
?自己の意見を持ち、能動的、協力的に仕事ができる。
?自分の所属部門だけではなく、全社的あるいは部門横断的な視点から物事を考えられる。

また、次の2点があればさらに良いです。
?コンサルタントを前向きな意味で「疑って」かかる。コンサルにどんどん挑戦する。
?プロジェクトをいい機会として、コンサルタントから知識やスキルを習得しよう、盗んでしまおう、という姿勢がある。

2.望ましくないタイプ

次に、敢えてAタイプの裏返しをしますが、顧客企業側のメンバ?として望ましくないタイプを挙げます。(Bタイプとします)

<Bタイプ>
?現場の経験が乏しい、また業務知識が不足している。
?問題意識に乏しく、現在の仕事に疑問を持っていない。
?「改善」や「変化」に後ろ向きである。現状維持や自分の役職・仕事の安泰を望んでいる。
?自分の意見が無く、上司の言うまま受動的に仕事をする。また非協力的である。
?自分の部署の立場から、あるいは自分の役職の立場からしか物事が見えない。見ようとしない。
?コンサルの言うことを鵜呑みにする。あるいは逆に、根拠無く全て反論して抵抗する。
?プロジェクトへの参加を自己啓発の好機と捉えない。

3.プロジェクトマネージャー

上記は個々の担当者レベルを念頭に列記しました。しかし重要なのは顧客企業側のプロジェクトマネージャーであり、この人がプロジェクトの成否を大きく左右します。望ましいプロジェクトマネージャー像は、上記を全て含み、それに下記を加えます。

?コンサルタントが主役ではなく、また上司である経営幹部も主役ではなく、自分こそがこのプロジェクトの主役であり「オーナー」である、という当事者意識を持っている。コンサルはあくまで目標達成のための「援軍」である、と位置付けている。
?プロジェクトの成功、目標の達成に対するコミットメントを持っている。そのためには、上司や経営幹部に対しても様々な意見が言える。
?プロジェクトメンバ?に遠慮せずリーダーシップを発揮できる。かつ個々のスタッフメンバ?の役割を尊重し、ある程度の権限委譲ができる。
?人材を重要視する。上記Bタイプの人材を排し、Aタイプの人材をプロジェクトに配置できる権限、交渉力を持っている。

顧客企業側にAタイプが多いとプロジェクトを進めやすく、成果も出しやすくなります。その反面、Aタイプが多いと常に挑戦を受け、妥協できない厳しさも増します。顧客側メンバ?が優秀で積極的なほど、コンサル側もそれ以上の資質、スキル、実行力を有していなければならず、プレッシャーも相当なものになります。ただ、そのせめぎ合いを経てプロジェクトの品質が向上していくわけです。

またAタイプのメンバ?は、プロジェクトを糧として自己の能力や経験値の向上を自ら図っていきます。うまくコンサルを活用すれば、これまで自社に無かったスキルやモノの見方なども企業内に内包化することができます。これは顧客企業にとってコンサルを使う無視できない副次効果です。さらに言えば、コンサルのノウハウやスキルについては、これを早く自社に内包化し、以降はコンサル不要にすることこそ最終的な到達点である、と言えます。そのためには、プロジェクトにAタイプのメンバ?を配置することがキーになります。


2003年1月
大塚 真太郎